人工膝関節置換術の注意点 【禁忌、メリット・デメリット】

公開日:
更新日:2022.10.18

人工膝関節置換術は、膝の痛みの原因を根本から解決できる、大変有効な治療法です。しかしその一方で、体への負担が大きく、一定のリスクやデメリットもあります。一度人工関節にした膝は元に戻せませんので、後悔しないためにも、事前に良い面、悪い面の両方を理解することは大切です。
そこで、人工膝関節置換術を検討中の方にぜひ知っていただきたい手術のメリットとデメリット、術後の禁忌肢位(避けるべき行為)について解説するとともに、こうした方々に検討いただきたい手術以外の新しい治療法についてご紹介します。
人工関節手術を受けるべきか迷っている方は、ぜひ参考にご覧ください。

情報提供医師

中西 潤 医師

中西 潤 医師(東京ひざ関節症クリニック 銀座院 院長)

日本整形外科学会認定 専門医

人工膝関節置換術とは

人工膝関節置換術は、変形性膝関節症やリウマチなどによって傷んでしまった関節(大腿骨、脛骨)の表面を削り取り、金属やセラミック、ポリエチレン等でできた人工関節をかぶせる手術です。
重症度に応じて削り取る軟骨や骨の量は変わります。重症で多くの骨を削り取った場合、人工関節も多くの部品を必要とします。

人工膝関節置換術

どのような人のための手術?

人工膝関節置換術は、変形性膝関節症やリウマチなど、膝の変性疾患が進行した重度の方に対して行われます。
膝の痛みや変形のせいで可動域が著しく制限されている方、そのせいで日常生活がままならないという方に行う、最終的な手段とお考えください。

対象となるのは何歳ぐらい?

初回に手術した年齢別 膝の人工関節の再置換の割合

人工膝関節置換手術は、通常、あまり若い方におすすめすることはありません。早くても60歳を過ぎてから検討することが多いです。これには、人工関節の耐用年数が関係します。
人工関節は、体に入れてから徐々に劣化していき、10〜20年で緩みなどの不具合が出てきますが、活発に動かすと、その寿命はさらに早まる可能性もあります。ですから、あまり早い段階で人工関節を入れてしまうと、何度も取り換えなくてはいけなくなります[1]

また、術後は膝の可動域も狭くなります。こうしたことから、活動的な若い方には不向きな手術といえるのです。ちなみに、厚生労働省の統計資料[2]によると、この手術を受ける方の平均年齢は75歳とのことでした。

手術の方法

手術の方法は、膝関節全体を人工関節に置き換える「全置換術(TKA)」と、一部だけを人工関節に置き換える「部分置換術(UKA)」があります。
関節の傷んだ部分だけ入れ替える「部分置換」の場合、体に入れる人工関節の部品の数が少なく、部品のサイズも小さいので、手術時に切開する範囲は狭くなります。また靭帯を残すことができるので、全置換に比べると膝の可動域を保つことができます。ただし、部分置換はご状態によって行えないこともありますので、その点はご注意ください。実際、手術の大半は全置換術で行われています。

全置換術(TKA)

部分換術(UKA)

部分置換術を受けることができる目安

  • 1. 膝をまっすぐ伸ばすことができる
  • 2. O脚やX脚の程度が軽い
  • 3. 膝の内側か外側のどちらか一方だけが痛い
  • 4. リウマチではない
  • 5. 肥満ではない
  • 6. 靱帯に異常がない

術後の禁忌事項

人工膝関節置換術の術後には、極力膝関節に負担がかからないよう、生活面でも一定の注意が望まれます。以下の点に注意してください。

姿勢

正座やあぐらは避けてください。人工関節が脱臼する可能性があります。

自転車の運転

坂道を登る際、深く踏み込むのは避けてください(自転車から降りて押してください)。
・体格にあった自転車を使用してください。

家事

床の雑巾がけは避けてください(モップがけを推奨します)。
・高いところのものを取るとき、洗濯物を干すときなどは片足に体重が乗らないように注意してください。
10kgを超える荷物は持たないようにしてください

着替え

ズボン、靴下は立ったまま履かないでください(座って履くようにしてください)。
・ズボンやパンツに足を入れる順番は、手術した足を先にしてください。脱ぐときは手術していない方の足から脱いでください。

入浴

・浴槽に出入りするときは、まず浴槽のヘリにしっかり捕まり、手術をしていない方の足から先に出入りしてください。
・滑らないようにマットなどを敷いてください。

運動

テニス、ジョギング、野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、スキーなどは避けてください。人工関節の破損を早める要因になります。
・散歩や水泳などは、膝に負担がかからない程度であれば行っていただいて結構です。

人工膝関節置換術のメリット

まず最も大きいのは、痛みを大幅に和らげることができる点です。人工関節手術は痛みの根本原因(関節組織の損傷)を解決する手術なので、このような効果が期待できます。
最大の悩みである「痛み」が軽減されることでスムーズな歩行が可能になり、それに伴って歩行姿勢の改善、他関節への負担軽減などの副次的効果も期待できます。
また、生活全般が改善されることで自信が蘇り、活動範囲が広がってQOL自体も向上します。

人工膝関節置換術のメリット

  • 痛みを大幅に軽減できる
  • スムーズな歩行が可能になる
  • 歩く姿がより自然に近づく
  • 他の関節への負担を減らせる
  • 膝を痛みなく動かせるのでQOLが向上する

人工膝関節置換術のデメリット(リスク)

術中、術後の生活において注意いただきたい点、どうしても術前通りにできなくなることがいくつかあります。ぜひその点もご理解ください。

一定の行動制限が残る(正座ができない)

各動作に必要な膝の可動域

現在普及している人工関節は、理論上は術後に正座することも可能です。とはいえ、術後には膝の曲げ伸ばしがしづらくなるのは事実で、正座や靴下を履く動作に不自由を感じることは少なくありません。ちなみに、膝の人工関節手術後に目指されている一般的な目標可動域は120度です。

治療後にも痛みが残ることがある

海外の研究ではありますが、人工膝関節手術を受けて3〜4年経過した人の約40%が何らかの痛みを、15%の人が激しい痛みを感じていることが報告されています。
同じことを人工股関節の手術を受けた人で調査したところ、何らかの痛みを感じているのは27%、激しい痛みを感じているのは6%程度でした[3]。同じ人工関節手術でも、股関節よりも膝の方が痛みが残りやすい結果だったのです。
それでも半数以上の方が痛みから解放されているわけですから、多くの方にとって有意義な手術であることは間違いありません。しかし、そうならない可能性も少なくないということは留意してください。

緩み・破損のリスクがある

術後の膝に大きな衝撃が加わると、人工関節が破損する危険性があります。また、人工関節は使っているうちにすり減って粉を生じるのですが、これを排除しようとする体の反応が骨を溶かしてしまい、その結果人工関節が緩むことがあります。緩みや破損が生じたら、再度手術して人工関節を取り替えなければいけません。

感染症に弱い

意外に知られていませんが、人工関節は細菌に感染しやすいです。
感染したら人工関節を取り外し、感染している場所を洗い流す処置を行った後、感染が落ち着いた時点で再度人工関節を取り付ける手術が必要になります。つまり、肉体的にも経済的にも、それだけ大きな負担になるということです。こうした事象は1,000人に2〜3人の割合で起こります。
ちなみに、細菌は手術部位の傷口だけでなく、血流などを通じて体の他の部位からうつることもあります。虫歯、ミズムシ、胃潰瘍などにかかっている場合は、手術前によく治療しておいてください。また、手術前後は風邪もひかないように注意が必要です。

感染予防の点で注意すべき疾患
(以下の疾患をお持ちの場合は、十分に治療した上で手術を受けましょう)

  • ✅風邪
  • ✅虫歯
  • ✅ミズムシ
  • ✅胃潰瘍
  • ✅糖尿病

出血量が少なくない

人工関節手術では関節を構成する骨を削り取りますが、骨の中の骨髄には血液が豊富に含まれるため、手術中の出血量は多くなりがちです。その量は大掛かりな外科手術に匹敵する300〜700mLにも達することがあり、時には輸血を要することもあります。最近では自分の血液をあらかじめ保存しておき、これを輸血に用いるという方法が一般的で、感染のリスクを減らす努力がなされています。ただ、輸血という行為自体が感染リスクを高める要因になっていることは否めません。

「人工関節は避けたい」とお考えの方へ

再生医療イメージ

人工膝関節置換術は痛みの根本原因を取り除くことができる優れた治療法です。
しかし一方で、避けられないリスク、超えられない限界があるのも事実です。
一般的な保険診療の問題点は、膝関節治療の選択肢が、保存的治療か手術治療かの極端な2択しか存在しないということだと考えます。
手術しか打つ手が無いほど重度ではないものの、保存的治療で痛みが和らぐほど軽症でもないという方は大勢いらっしゃるからです。
昨今、このような方々には「再生医療」という新しい治療法が用いられるようになりつつあるのをご存知でしょうか。
再生医療は、医師に手術を勧められている方、手術を受けるべきか迷っている方の膝の痛みを、入院や手術なしに軽減することができる可能性があります。
その可能性にかけてみたいという方は、セカンドオピニオンのつもりで、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。専門医が治療の適応を判定いたします。

セカンドオピニオンを聞いてみたいという方
▶︎はじめてのご来院予約
再生医療の適応があるか知りたい方
▶︎MRIひざ即日診断

はじめてのご来院

コラムのポイント

  • 人工膝関節置換術は重度の膝痛治療の最終手段
  • 人工関節手術にはデメリットやリスクもあるので決断は慎重にすべき
  • 再生医療は手術の適応とされる症状を低負担に改善できる有用な選択肢

よくある質問

人工膝関節置換術の術後の注意点があれば教えてください。

合併症予防の観点から注意すべき点と、生活上の注意点があります。
人工膝関節置換術の術後に注意していただきたい合併症には、血栓症、肺炎/肺水腫、各種感染症などがあります。
一方、日常生活で気をつけることとしては、太らない、風邪をひかない、洋式の生活に切り替える、重い荷物を持たない、不安定な靴を履かないなど、膝への負担を軽減する配慮が求められます。

具体的な対処法についてはこちらのコラムで詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
▶︎人工膝関節置換術の術後について【合併症と生活上の注意点】

術後のリハビリは必要ですか?いつから開始しますか?

リハビリは必ず行います。タイミングは、手術後できるだけ早く開始します。
筋肉や腱は、動かさないとすぐに弱ってしまいます。リハビリを行うことで弱った筋肉が強くなり、関節の動きも良くなるので、しっかり取り組めば早期に日常生活に復帰することが可能です。
時期はご状態に応じてですが、できるだけ早く開始します。部分置換術であれば手術の翌日からリハビリを開始することもあります。

人工関節以外の新たな選択肢
「再生医療」

変形性膝関節症の方、慢性的なひざの
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