PRP療法が膝の痛みに果たす役割とは? | 整形外科専門医コラム

公開日:2021.11.10
更新日:

まずは鎮痛薬の服用を始めとする保存療法、効果が見られなければ外科手術。従来、膝の痛みの治療はこうでした。しかし、これを読んでいる方は、そのどちらでもない、第3の治療法に期待しているのではないかと思います。
そのひとつとして注目を浴びているのが、膝のPRP療法。ヨーロッパ・アメリカなどではスポーツ選手から一般の人まで広く浸透している治療法で、メジャーリーグで活躍中の大谷翔平選手や田中将大選手が受けたことをご存知の方も多いでしょう。膝のPRP療法の詳細な方法やメカニズム、副作用などについて、私が過去に手掛けた症例も交えつつお話しします。

情報提供医師

尾辻 正樹 医師

尾辻 正樹 医師(横浜ひざ関節症クリニック 院長)

日本整形外科学会認定 専門医

膝のPRP療法とは

PRP(Platelet Rich Plasma)療法は再生医療の一つで、自身の血液に含まれる血小板を膝に注射する治療法です。
血小板に止血作用があることは知られていますが、実はそれだけでなく、傷が治癒するまでの過程にも関与しています。この働きに着目して誕生したのが、血小板を豊富に含む多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう:PRP)を用いた治療なのです。
最近生み出されたわけではなく、臨床で応用され始めたのは1970年代からというPRP療法。現在では、日本でも導入する医療施設が多くなり、膝の痛み治療として整形外科で用いられる他、美容医療、歯科や皮膚科での治療といったさまざまな分野で応用されています。

膝の痛みの緩和に作用するメカニズム

自己修復力を高める効果があるPRP療法。修復力を高めることで治りづらくなった膝の痛みを治療することができます。
そうした効果のカギとなるのが、血小板から放出される成長因子です。皮膚を切って出血しても、いずれは血が止まり、皮膚もきれいに修復されます。これこそ、血小板と成長因子のおかげです。
傷の修復、炎症の抑制といった役割を持つさまざまな成長因子の働きで、膝の状態が整っていくのです。

【PRPに含まれる成長因子の例】
– TGF-β……軟骨細胞や骨芽細胞の増加
– bFGF/EGF……損傷した組織や筋細胞の修復・調整
– CTGF……軟骨の修復や線維化
– VEGF……血管の緊張や炎症を調整する細胞の増加
– PDGFa-b……組織修復に関わる細胞の分裂を促進

PRP療法の効果

PRP療法は自己修復力を引き出す治療法なので、膝の痛みの症状が従来の痛み止めやヒアルロン酸注射などで改善しなかった方にも、十分効果が期待できます。

PRPに含まれる血小板の数は、通常の血液の3〜5倍というデータがあり、そのぶん修復能力や鎮痛効果も格段に高いと考えらるためです[1]

実際に、変形性膝関節症の方を対象にPRP療法を行ったところ、ヒアルロン酸注射と比較して高い効果を得られたとする論文も発表されました[2]

適応疾患と治療目的

膝の疾患では、初期~進行期の変形性膝関節症の方の他、半月板損傷、靭帯損傷、肉離れといったスポーツによる外傷、スポーツ障害なども適応となります。
変形性膝関節症では、痛みの緩和と進行抑制を、靭帯損傷などのスポーツ外傷では早期復帰を、という様に最終的な治療目的は病状によって異なります。

治療の流れと実際の症例

血液の作用に着目した治療法のため、施術に際しては採血が必要です。外科手術のように、膝を切開する必要はありませんのでご安心ください。病院によっても異なりますが、採血量は30ml程ですので貧血の方でも問題なく治療を受けていただけます。この血液を遠心分離しPRPを生成、これを注射器で膝へ注入します。所要時間は1時間程度で、入院も不要です。
実際に膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)の治療が難渋している患者さまにPRP療法を行った症例では、20mlの血液から生成した約2mlのPRPを注射し、2週間ほどで膝の痛みが軽減。そして約1ヶ月のフォローアップ期間中に、一定レベルのスポーツに復帰されました。これまでPRP療法を行ってきた中では、これと同程度の期間で効果を実感できたケースが多いという印象があります。ただし疾患の重症度にもよりますので、あくまで指標とお考えください。

メリット・デメリット

PRPは手術や入院が必要なく、自己の血液によって修復力を促す治療であるため、アレルギーなどの心配がない他、重篤な副作用の報告もありません
一方で、自由診療となる為ヒアルロン酸などの保険診療よりも1回の治療費の負担が大きくなるというデメリットがあります。

PRP療法のメリット
・慢性的な膝の痛みにも効果的
細胞分裂を活発にする物質が、痛みの根本改善を図ります。
・リスクの少ない治療法
自己の血液成分を体内に戻す方法であるため、重い副作用は認められていません。
・手術せずに注射で治療
手術や入院が必要ないため、日帰りで治療を受けていただけます。

PRP療法のデメリット
・保険適用外の治療
自由診療での提供となるので、費用は10割負担となります。
・効果の出方にばらつきがある
ひざの状態によっては安定した効果が出にくいことがあります。
・痛みを伴う場合がある
治療後に膝の痛みや腫れ、熱感などを数日伴うこともあります。

PRPを受けることができない場合も
お体の状態によってはPRP療法を受けることができない場合もございます。

– がんと診断されたことがある
– 抗がん剤、または生物学的製剤または免疫抑制剤を使用している
– 患部に感染がある
– 心疾患、肺疾患、肝疾患、腎疾患、出血傾向、血液疾患、コントロール不良な糖尿病および高血圧症等を有する
– 血液検査の結果に異状がある
– ステロイド剤を使用している

副作用が起きる可能性は?

一般的に、PRPは自身の血液からなる注入剤のため、治療に際して副作用が出にくいのが特長です。
膝の痛みに行われる注射としては、ヒアルロン酸注射やステロイド注射といったものもあり、世間に広く浸透しています。ヒアルロン酸注射は副作用こそ少ないですが、効果の持続性が乏しいというのが難点です。また、ステロイド注射には軟骨の代謝抑制による軟骨破壊といった副作用があります。
一方、PRP療法の症例では、注射後の反応痛が強く出る場合がありますが、副作用と呼べるほどの重篤な症状は出現しませんでした。反応痛とは、細胞分裂を活性化させる成長因子の働きで起きる炎症によるもので、注射した部位に成長因子が浸透し、作用している証拠でもあります。痛みの続く期間としては数日〜1週間程度が多いでしょう。注射後の反応による炎症が落ち着いてくると、反応痛も軽減するものと考えられます。
ただ、反応痛の有無や強弱は、注入部位によっても違ってくるように感じています。実際に、関節外の靭帯への注入に反応痛が現れたという報告があります。変形性膝関節症の治療は関節内に注入する時よりも、関節外の注入の際に反応痛を誘発しやすい傾向があり、これは、関節という広域部分よりも、靭帯や腱のほうが組織の密度が高いためと考えられます。

PRP-FD注射との違い

当院でも以前はPRP療法を行っていましたが、現在はその一種である「PRP-FD注射」を、変形性膝関節症の治療法として採用しています。血液からPRPを生成するところまでは同じ工程ですが、PRP-FD注射はそこから血小板由来の成長因子のみを高濃度に加工したものです。

これにより成長因子が2倍に増えることが分かっています[3]

当院ではこれまでに2000例以上を行ってきましたが、そのデータを見ても、期待できる効果はPRP療法より高いと考えています。また、加工の段階で無細胞化しているため、注射後の反応痛も格段に少ないようです。

痛みを緩和し生活の質を高めることも目的

膝の痛みの緩和が期待できるPRP療法は、効果の持続性も優れています。変形性膝関節症などで膝に痛みのある状態が続くと、恐怖感が蓄積され「歩いてはいけない」「運動しないでおこう」とネガティブになってしまうかもしれません。しかし、過度の安静は筋力の低下を招きます。特に、膝関節への負担を和らげるはたらきがある、太ももやふくらはぎの筋力低下は、膝の痛みを悪化させる大きな要因になります。そうした痛みの悪循環から抜け出すために、PRP療法は有効です。

膝の痛みをPRP療法で改善することで歩くことはもちろん、適度な運動やストレッチも可能になり、より痛みに負けない膝を作っていくことができるのです。PRP療法は、膝の好循環をつくるための一助としても有効であると私たちは考えています。

当院では治療が効くか不安な方へ、治療の適応を事前に確認できるMRIひざ即日診断をご用意しております。
詳しくは以下のリンク、もしくはお電話よりお気軽にお問い合わせください。
MRIひざ即日診断

膝の痛みのご相談や、PRP治療にご興味がある方は、はじめての来院予約からご予約いただけます。ぜひ一度クリニックへご来院ください。

はじめてのご来院

ひざ関節症クリニックは再生医療等提供計画が受理されています

再生医療の提供は、再生医療等安全性確保法(自由診療・臨床研究の枠組みで再生医療を行うための法律)に則って、再生医療等提供計画を作成し、認定再生医療等委員会の厳しい審査をパスしたうえで、厚生労働省に受理された医療機関だけに認められています。
ひざ関節症クリニックのヒト幹細胞を用いた第二種再生医療等提供計画は厚生労働省に受理され、安全性のある治療を提供できる医療機関として、登録されています。
横浜院:計画番号(PB3190073)
銀座院:計画番号
(PB3180030、PB3180071)
新宿院:計画番号(PB3180003)

その他の地方院の登録は、下記よりご確認いただけます。
第二種再生医療等提供機関リスト:厚生労働省サイト

コラムのポイント

  • PRP療法とは、自身の血液に含まれる血小板を膝に注射する治療法
  • 変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯損傷に効果が期待できる
  • PRP療法で痛みを緩和し、痛みに負けないひざにしましょう

よくある質問

変形性膝関節症と診断されたのですが、PRP療法などの再生医療は高齢でも受けることはできますか?

もちろん可能です。
再生医療では、ひざを切らず、入院せずに治療が出来るため、手術の体力が不安といったご高齢の方でも治療を受けていただけます。
当クリニックでは実際に90歳以上の方にも再生医療をご提供しており、その効果を実感していただいております。
また、PRP療法や培養幹細胞治療では患者さまご自身の血液や細胞を利用しますので、副作用が少ないというところも特徴です。

なお、再生医療で効果が期待できるかどうかは、変形性膝関節症の重症度や患部・お体の状態にもよります。
当院では、まずMRI検査なども用いて、お膝の状態を詳しく診断し、そのご報告や効果が見込めるかどうかなどを患者さまにわかりやすくお伝えしております。
治療されるかどうかは結果をお持ちかりいただき、その後にご検討いただくこともできますので、まずはお気軽にご相談ください。

はじめての来院ご予約

ヒアルロン酸注射が効かないのですが、PRP注射は効果がありますか?

症状によって適応か否かの判断となりますが、PRP療法はヒアルロン酸が効かなくなった変形性膝関節症の進行期にの痛みにも効果が期待される治療です。
ヒアルロン酸注射は変形性膝関節症の初期(軟骨破壊がさほど進んでいない状態)には有効な治療とされており、日本ではひざの痛みを和らげる治療法として、広く提供されています。
加齢によって減少した関節内の滑液を補充することで、膝の動きを滑らかにし、関節のすり減りを防ぐ治療法ですが、あくまでも保存療法なので症状が進行するにつれて徐々に効果が得にくくなります。
一方、PRP療法は、自分の血液内の細胞血小板の成分の働きで組織の修復を促す治療です。初期だけでなく進行期にも適応するため、ヒアルロン酸が効かない方でも改善が期待できます。

なお、当院ではPRPの修復に働く成分を2倍以上に濃縮したものを注入する、PRP-FD注射を扱っておりますが、どの程度の効果が期待できるかはご状態によって異なります。
そのため、治療前には必ずMRI検査を受けていただき、改善の見込みをご理解いただいた上で案内させていただきます。
ご希望の方は「MRIひざ即日診断」にお申し込みください。

PRP-FD治療では一度にどのくらいの血液を採取するのですか?

1回あたり片膝分49mlの血液を採取させていただきます。

普段、健康診断などではそんなに量を採ることはないので不安に思われる方もいらっしゃいますが、献血では200ml、400mlと採取しますので、それに比べると半分以下の量です。
貧血にならないか不安という患者様もいらっしゃいますが、49mlであれば貧血になるほどの量ではございませんのでご安心ください。

治療を決めたらすぐに治療ができ、効果が出るのでしょうか?

PRP-FD治療では即日治療はできません。

PRP-FDは採血を行い、血小板の成分を取り出し、濃縮してから注射を行うため、加工までに約3週間のお時間を要します。
また、施術後も注射をしてその日から効果が出るわけではなく、平均で3~4カ月程度で効果を実感いただけます。
PRP-FD注射は即効性はなく、徐々に痛みが軽くなっていくという治療です。治療後すぐに効果が出ないから失敗だった、というわけではありませんので、ご安心ください。

自由診療とのことですが、費用はどのくらいかかりますか?

当院の治療は自由診療になりますが、医療費控除制度が適応される場合があります。

PRP-FD注射の費用についての詳細は、料金ページにてご案内しております。
以下よりご確認下さいませ。

料金表

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