「スポーツや交通事故で膝の外側に激しい衝撃を受けた」
「外側側副靭帯損傷と診断されたが、手術が必要なのか不安」
「歩こうとすると膝がカクッと外れるような感覚がある」
このように、突然の大きなケガに戸惑い、今後の治療方針やスポーツ復帰に不安を抱えている10〜40代の方は非常に多くいらっしゃいます。
この記事では、外側側副靭帯を損傷する主な原因や、複合損傷が疑われるケース、損傷の程度ごとの症状・治療法について解説します。
外側側副靭帯は、単独で切れることは珍しく、十字靭帯や半月板などを同時に痛めている(複合損傷)リスクが高い危険なケガです。
まずはMRI検査で膝全体のダメージを正確に把握し、損傷のグレードに合わせた適切な治療を選択することが、後遺症を防ぎ早期回復を果たすための着実なルートとなります。
目次
- 膝の外側側副靭帯(LCL)とは?どんな役割をしているのか
- 膝の外側のぐらつきを防ぐ重要な組織
- 内側側副靭帯(MCL)に比べて単独損傷は珍しい
- なぜ切れる?外側側副靭帯の特有の受傷メカニズム
- 受傷のメカニズム(内反ストレスとは)
- 【要注意】十字靭帯や半月板を同時に痛める複合損傷の危険性
- 【グレード別】損傷の度合い(1度〜3度)と症状の変化
- グレード別の症状・治療法一覧表
- 1度(軽症):微細な損傷で、痛みはあるが不安定感はない
- 2度(中等症):部分断裂により、腫れと軽度のぐらつきが生じる
- 3度(重症):完全断裂による激しい痛みと強い膝崩れ
- 正確な診断がカギ!徒手検査とMRI検査の重要性
- 医師による関節の緩みチェック「ストレステスト(徒手検査)」
- 他の靭帯や半月板のダメージを可視化する「MRI検査」
- 外側側副靭帯損傷の治療法:手術は必須なのか?
- 1度・2度に対する保存療法(サポーター固定とリハビリ)
- 3度の完全断裂や「複合損傷」における手術療法
- 手術を避けたい・回復を早めたい方へ
- 治療選択肢の比較表
- 組織の修復を後押しする「PRP療法」などの切らない治療
- まとめ:外側側副靭帯のケガを放置せずまずは正確な診断を
膝の外側側副靭帯(LCL)とは?どんな役割をしているのか
膝の外側にある外側側副靭帯は、膝が外側へ不自然にくの字に折れ曲がらないようにガッチリと支える強力なバンドの役割を果たしています。
突然ケガをして病名を告げられても、それが膝のどこにあって、どのような役割をしているのかイメージしにくいかもしれません。
まずは、この靭帯が果たす重要なストッパー機能について理解しておきましょう。
膝の外側のぐらつきを防ぐ重要な組織
私たちの膝関節は、複数の靭帯によって前後左右の安定性が保たれています。その中で、膝の外側を支えているのが「外側側副靭帯(LCL:LateralCollateralLigament)」です。
この靭帯は、太ももの骨(大腿骨)の外側から、すねの外側に添うように細く伸びている骨(腓骨:ひこつ)にかけて、上下を繋ぎ止めているロープのような組織です。
外側側副靭帯は、膝関節に横方向の力が加わった際に、膝が外側に向かってパカッと開いてしまうのを防ぐ強力なストッパーの役割を担っています。
このストッパー機能があるおかげで、私たちはスポーツ中に踏ん張ったり、歩行時に体重をかけたりしても、膝が左右にブレることなく安定した動きを維持できると考えられています。
内側側副靭帯(MCL)に比べて単独損傷は珍しい
膝の靭帯損傷といえば、スポーツ選手などでよく耳にする「内側側副靭帯(MCL)」のケガを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、膝の内側と外側では、ケガの発生頻度やその後のリスクが大きく異なります。
外側側副靭帯(LCL)だけが単独で切れたり傷ついたりするケースは比較的珍しく、他の組織を同時に痛めている可能性が高いという特徴があります。
膝の内側を支える靭帯に比べると、外側の靭帯は周囲の構造上、単体で強い負荷を受けにくい仕組みになっています。
そのため、この外側側副靭帯が損傷するほどの強烈な衝撃が加わった場合、膝の内部にある前十字靭帯や半月板といった他の重要な組織までダメージが及んでいるケース(複合損傷)が非常に多いとされています。
単なる外側だけのケガだと自己判断してしまうのは、非常に危険な状態と言えるのです。
なぜ切れる?外側側副靭帯の特有の受傷メカニズム
交通事故などで、膝の内側から外側に向けた強烈な衝撃を受けた際に、外側の靭帯が限界を超えて引き伸ばされて損傷します。
スポーツで頻繁に起こる足首の捻挫などとは異なり、外側側副靭帯が切れるには、それ相応の特殊で強烈な力が膝にかかる必要があります。
どのような状況でこのケガが起こるのか、そのメカニズムを見ていきましょう。
受傷のメカニズム(内反ストレスとは)
外側側副靭帯が損傷する最も典型的な原因は、膝の関節に対して内側から外側へ向かって強烈な力が加わることです。
医学的には、この特定の方向に働く力を内反ストレスと呼びます。
例えば、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツで、膝の内側から強烈なタックルを受けた時や、柔道で膝の内側を強く蹴られた時などに発生します。
また、スポーツに限らず、バイクの転倒などの交通事故で膝の内側を車体に激しく打ち付けた際にも起こりやすいケガです。
膝に内反ストレスが加わると、膝関節が外側に向かって「くの字」に折れ曲がり、ストッパーである外側側副靭帯が限界を超えて無理やり引き伸ばされ、断裂してしまいます。
ご自身のケガを振り返り、「膝の内側に何かがぶつかった」「膝が外側にパカッと開くような衝撃があった」という場合は、外側側副靭帯の損傷を強く疑う必要があります。
【要注意】十字靭帯や半月板を同時に痛める複合損傷の危険性
外側側副靭帯が断裂するほどの強い内反ストレスが加わった場合は、外側側副靭帯だけでなく、膝関節の内部にある前十字靭帯(ACL)や後十字靭帯(PCL)、半月板まで同時に損傷している可能性があります。
もともと外側側副靭帯は非常に丈夫な構造で守られており、単独で断裂するケースは多くありません。そのため、外側側副靭帯が切れるほどの外力が加わっている場合は、膝全体に強いダメージが及んでいることを前提に考える必要があります。
このような複合損傷では膝の安定性が大きく損なわれ、歩行やスポーツ動作に支障が出るだけでなく、将来的に変形性膝関節症につながる原因にもなります。
「膝の外側が痛いだけ」と自己判断せず、膝全体の損傷を疑って慎重に対応することが重要です。
こちらの記事では、合併損傷として非常に多い「半月板損傷」について詳しく解説しています。
複合損傷のリスクを知るためにもこちらの記事をご確認下さい。
▷『半月板損傷とは?原因・症状・治療法・回復期間まで専門医がわかりやすく解説』
【グレード別】損傷の度合い(1度〜3度)と症状の変化
外側側副靭帯損傷は、ダメージの大きさによって1度(軽症)から3度(重症)までの3段階に分類されます。
グレードが上がるほど、痛みや腫れに加えて、膝のぐらつき(不安定感)が強くなるのが特徴です。
ご自身の症状の程度を把握することは、治療方針や手術の必要性を考えるうえで参考になります。
グレード別の症状・治療法一覧表
まずは、各グレードにおける靭帯の状態と、主な症状、そして基本となる治療法を以下の表で整理しましょう。
| グレード | 靭帯の状態 | 主な症状(痛み・不安定感) | 基本となる治療法 |
|---|---|---|---|
| 1度(軽症) | 微細な損傷 | 痛みはあるが、膝のぐらつきはない | 保存療法(軽度の固定・安静) |
| 2度(中等症) | 部分断裂 | 痛み・腫れがあり、軽度の不安定感がある | 保存療法(装具固定・リハビリ) |
| 3度(重症) | 完全断裂 | 激しい痛み、強い膝崩れ(歩行困難) | 手術療法 |
1度(軽症):微細な損傷で、痛みはあるが不安定感はない
1度損傷は、靭帯の線維がわずかに伸びたり微小に傷ついたりした状態です。
膝の外側に局所的な痛みはありますが、関節を支える機能は保たれているため、ぐらつき(不安定感)は基本的にみられません。
受傷直後はアイシングを行い、必要に応じてサポーターなどで保護しながら安静を保つことが重要です。
この段階であれば、保存療法で改善が期待できます。
2度(中等症):部分断裂により、腫れと軽度のぐらつきが生じる
2度損傷は、靭帯が「部分的に」切れてしまった状態であり、痛みや腫れに加えて軽度の不安定感が現れるようになります。
1度よりも痛みが強く、内側から外側へ向かう力(内反ストレス)をかけた際に、膝の関節が少しパカッと開いてしまうような緩みを感じるのが特徴です。
この状態を放置すると、靭帯が緩んだまま治癒してしまうおそれがあるため、装具などで一定期間しっかり固定し、リハビリを含めて慎重に治療を進める必要があります。
3度(重症):完全断裂による激しい痛みと強い膝崩れ
3度損傷は、靭帯が完全に断裂した状態です。
受傷直後から強い痛みや腫れがみられ、膝を支えきれずに「ガクッ」と外れるような膝崩れが起こりやすくなります。歩行が困難になることも少なくありません。
また、外側側副靭帯が完全に断裂するほどの強い外力が加わっている場合は、十字靭帯や半月板などを同時に損傷している複合損傷の可能性も考える必要があります。
このグレードでは保存療法だけで十分な安定性を取り戻すことが難しいこともあり、状態によっては手術が検討されます。
正確な診断がカギ!徒手検査とMRI検査の重要性
医師が直接膝を動かして靭帯の緩みを確認する徒手検査に加え、隠れた複合損傷を見逃さないためにはMRI検査が不可欠です。
外側側副靭帯が損傷した場合、単なる打撲や捻挫として放置してしまうと、後から強い不安定感に悩まされることになります。
適切な治療方針を決定するためには、以下の2つの検査による正確な診断が極めて重要です。
医師による関節の緩みチェック「ストレステスト(徒手検査)」
膝の専門医が直接手で膝を動かし、靭帯がどの程度機能しているか(緩みがあるか)を評価する初期診断が「徒手検査(としゅけんさ)」です。
外側側副靭帯の損傷を疑う場合、まずは「内反(ないはん)ストレステスト」と呼ばれる徒手検査が行われます。
これは、患者様を仰向けに寝かせた状態で、医師が手で膝に内側から外側へ向かう力(内反ストレス)を意図的にかけ、膝の関節が外側に向かってどの程度パカッと開いてしまうか(関節の緩み)を直接確認する検査です。
この検査では、靭帯がしっかり機能しているか、やや緩みがあるか、あるいは抵抗なく大きく開いてしまうかを触診で確認し、損傷の程度をおおまかに評価します。
初期の段階で靭帯機能がどの程度保たれているかを把握するうえで、重要な評価のひとつです。
あわせて、他の靭帯に緩みがないかも確認し、膝全体の安定性をみていきます。
他の靭帯や半月板のダメージを可視化する「MRI検査」
レントゲンでは骨の状態は確認できますが、靭帯や半月板といった軟部組織までは詳しく診断できません。
そのため、十字靭帯や半月板の損傷を伴う可能性がある場合は、MRI検査による診断が重要になります。
特に、外側側副靭帯が断裂するほどの強い外力が加わった場合は、膝の内部にある前十字靭帯や半月板などを同時に損傷している可能性があります。
こうしたレントゲンではわからない損傷の有無や程度を確認するうえで、MRIは非常に有用な検査です。
MRIでは、靭帯や半月板の断裂の程度に加え、合併損傷の有無まで詳しく把握することができます。
そのため、膝の状態を正確に把握し、後遺症をできるだけ残さないための治療方針を検討するうえで重要です。
こちらの記事では、レントゲンとMRIで具体的に何がわかるのか、その違いについて詳しく解説しています。
診断方法に不安を感じている方はこちらの記事をご確認下さい。
▷『膝のMRI検査で何がわかる?知っておきたいMRIとレントゲンの違い』
整形外科で治療を受けても膝の痛みや腫れが長引いている場合、自己判断での放置は関節内の状態をさらに悪化させる原因になります。まずは当院の「MRIひざ即日診断」で膝内部の現状を正確に把握しましょう。

外側側副靭帯損傷の治療法:手術は必須なのか?
1度や2度の軽度〜中等度の場合はサポーター等での保存療法で回復が期待できますが、完全断裂や複合損傷がある場合は手術が検討されます。
外側側副靭帯を損傷した場合、「必ず手術をしなければならないのか?」と不安に思う方は非常に多くいらっしゃいます。
治療法は、MRI検査などで判明した損傷のグレードや他の組織へのダメージの有無によって大きく2つに分かれます。
1度・2度に対する保存療法(サポーター固定とリハビリ)
1度や2度の損傷であれば、専用の装具で膝をしっかり「固定」し、段階的なリハビリを行う保存療法が標準的な治療となります。
完全には断裂していない軽度〜中等度(1度・2度)のケースでは、まずは患部の安静を保つことが最優先です。
受傷直後はアイシングで炎症を抑え、その後はサポーターや金属支柱入りの専用装具を用いて膝関節をしっかりと固定します。
固定することで、切れた靭帯が正しい位置で自然に修復されるのを促します。
痛みが落ち着いてきたら、膝の専門医や理学療法士の指導のもと、太ももの筋肉が落ちないようにリハビリを開始します。
適切な固定と筋力低下を防ぐトレーニングを並行して行うことで、手術を行わずともスポーツや日常生活への回復が十分に期待できます。
3度の完全断裂や「複合損傷」における手術療法
靭帯が完全に断裂している場合や、十字靭帯などを同時に痛めている「複合損傷」の場合は、自然治癒が難しいため「手術」が必要になるケースが多くなります。
外側側副靭帯が完全に切れてしまっている重症(3度)の場合、ギプスや装具で固定する「保存療法」だけでは、靭帯が元の強度でくっつくことは期待できません。
また、前述した通り、外側側副靭帯が断裂するほどの衝撃を受けると、高い確率で前十字靭帯や半月板なども同時に破壊される複合損傷を引き起こしています。
複数の組織が壊れている状態で放置すると、膝のグラグラ感(不安定感)が残り、将来的に歩けなくなるリスクが生じます。
そのため、膝の安定性を確実に取り戻すためには、切れた靭帯を縫い合わせたり、他の腱を移植して新しい靭帯を作る(再建する)手術が必要不可欠となるケースが一般的です。
手術を避けたい・回復を早めたい方へ「再生医療」
保存療法で十分な改善が得られない場合や、できるだけ手術・入院を避けたい場合には、ご自身の治癒力を活かす「再生医療」という選択肢があります。
保存療法、手術療法に加えて、近年では再生医療も治療選択肢のひとつとして注目されています。
治療法を選ぶ際は、症状の重さだけでなく、スポーツ復帰までの希望時期や仕事への影響、入院の可否なども含めて考えることが大切です。
治療選択肢の比較表
| 治療法 | 主な目的・内容 | メリット | デメリット | 入院の有無 |
|---|---|---|---|---|
| 保存療法 (装具・リハビリ) | 自己修復を待つ | 体への負担が少ない。手軽に取り組める。 | 重症例では不安定感が残る。回復に時間がかかる。 | 不要 |
| 手術療法 (縫合・再建術) | 物理的な修復 | 根本的な安定性の回復が期待できる。 | 長期間の入院とリハビリが必要。体への負担(メス)が大きい。 | 必要 |
| 再生医療 (PRP療法など) | 修復スピードの促進 | 日帰りで可能。ご自身の組織を使うため身体的な負担が少ない。 | 自由診療のため費用が高額になるケースがある。 | 不要(日帰り) |
組織の修復を後押しする「PRP療法」などの切らない治療
「PRP療法」は、ご自身の血液に含まれる修復成分を活用し、傷ついた靭帯の回復スピードを上げる「切らない治療」の選択肢です。
「手術を受けて長期間仕事を休むことは避けたい」「できるだけ早くスポーツに復帰したい」といった方にとって、選択肢のひとつになります。
PRP療法では、患者様ご自身の血液を少量採取し、その中から組織の修復を助ける成分を濃縮して抽出し、損傷部位の周囲に注射します。
体が本来持っている治癒力を活かすことで、炎症の軽減や組織修復の促進が期待されます。
ただし、PRP療法だけで完全に断裂した靭帯を元通りにつなぎ合わせることは難しく、すべてのケースで手術の代わりになるわけではありません。
一方で、手術を回避したい場合や、保存療法の効果を後押ししたい場合には、選択肢となることがあります。
また、ご自身の血液を使用するため、拒絶反応のリスクが低く、日帰りで処置が完了する点も特徴です。
こちらの記事では、ご自身の血液を活用して組織の修復を促す「PRP療法」の具体的な効果やメリット・デメリットについて解説しています。
手術を避けつつ組織の修復を早めたい方はこちらの記事をご確認下さい。▷『PRP療法が膝の痛みに果たす役割とは?【効果・メリット・デメリット】』
まとめ:外側側副靭帯のケガを放置せずまずは正確な診断を
交通事故やスポーツで膝に強い衝撃を受け、不安な日々を過ごされている方も多いと思います。大切なのは、まず「今、膝の中で何が起きているのか」を正確に把握することです。
本記事で解説した通り、外側側副靭帯損傷は、膝に強い内半ストレスが加わることで起こります。外側側副靭帯だけでなく、十字靭帯や半月板などを同時に損傷している可能性もあるため、膝全体の状態を確認することが重要です。
また、損傷の程度によって、保存療法が適している場合もあれば、手術を検討すべき場合もあります。自己判断で様子を見続けるのではなく、まずは適切な診断を受けたうえで治療方針を考えることが大切です。
複合損傷の有無や損傷の程度を確認するためには、MRI検査が有用です。
当院では、詳細な靭帯や半月板の状態を確認できる「MRIひざ即日診断」をご案内しています。
初期治療後も痛みや不安定感が続いている方、手術以外の選択肢も含めて相談したい方は、まずはお気軽にご相談ください。

人工関節以外の新たな選択肢
「再生医療」
変形性膝関節症の方、慢性的なひざの
痛みにお悩みの方は是非ご検討ください。
電話から
電話受付時間 9:00 〜18:00/土日もOK
ネットから