変形性膝関節症ですが、漢方はどれくらいの期間飲めば効きますか?

情報提供医師

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尾辻 正樹 医師(横浜ひざ関節症クリニック 院長)日本整形外科学会認定 専門医

3年ほど前から膝が痛くて整形外科に通っており、変形性膝関節症と言われています。
薬は処方されているのですが、漢方もあるとネットで見ました。
どんな漢方が良いのでしょうか?
処方されている痛み止めと一緒に飲んでも大丈夫でしょうか?
あと、漢方が効くとすると、どのくらいの期間飲めば効果が出てくるでしょうか?

痛みでお辛い思いをされていると拝察いたします。

変形性膝関節症の治療法


膝関節軟骨の摩耗が原因で徐々に進行し、炎症による痛みが生じる変形性膝関節症ですが、治療方法は痛み止めの内服薬、湿布などの外用薬を使用し、効果が無い場合はヒアルロン酸を関節内に注入する注射治療が一般的です。重症例では、膝下の骨を切ってO脚を矯正する外反骨切り術や、関節を人工物で取り換える人工膝関節置換術が行われます。


漢方薬には膝の炎症を抑える効果も


意外に思われるかもしれませんが、変形性膝関節症のような痛みを伴う整形外科疾患にも漢方薬は用いられます。
良く知られているのは防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)です。成分中の主薬となる「防已」には抗炎症作用があり、西洋薬の鎮痛剤と同様に、炎症を改善することで効果を発揮します。
ただし、漢方治療の特徴は、疾患名ではなく、傷んでいる膝の状態や、患者さんの体質など、東洋医学的な特徴から処方を選択することにあります。


漢方薬「防己黄耆湯」が効きやすい方の特徴


防己黄耆湯を選択する患者さんの身体的特徴は、色白で肥満傾向があり、汗をかきやすく、むくみやすいなど、「水毒(すいどく)」体質を認めることです。外来診察では「舌」を拝見し、むくんでいる舌に奥歯が当たって、舌に歯の痕がつく「歯痕」を観察します。この水毒傾向がある患者さんは、無い方に比べて、本処方の効果が得やすいことを経験しています。


膝の炎症が強い時に使用するのは「麻黄」


関節に腫脹が強く、熱感を伴い、痛みが激しいときは、防已ではなく麻黄(まおう)が主薬となる処方を選択します。
代表的な処方には、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)と薏苡仁湯(よくいにんとう)があります。
前者は麻黄と石膏を含むため、局所の炎症が強い方に対して除痛効果が期待出来ます。
後者は麻黄と薏苡仁(はとむぎ)を含み、薏苡仁は硬いものを柔らかくする作用があるため、関節の動きが悪い方に有効です。

ただし漢方薬も、主治医から人工関節置換術を勧められるような重症の方では効果が得にくいといわれています。これは西洋薬でも同じです。


どれくらいの期間飲めば効果が期待できる?


服用期間については、2週間程度でも十分に効果が得られ、すでに学会や論文で報告されています。
軽症の方なら痛いときだけに服用する頓服でもかまいません。特に、防己黄耆湯の最大の利点は、胃腸障害、腎障害、喘息など、一般的な鎮痛剤が使用しにくい方にも適応できる点です。
水毒の方にはより良い適応ですが、患者さんのタイプを選ばずに使用できる処方です。


鎮痛薬との併用は可能?


鎮痛剤と併用しても問題になることはありませんが、漢方薬単独でも効果は得られるため、使い分けることをお勧めします。
ご自身に合った漢方薬の効能や、飲み合わせなど詳しく知りたい方は、
はじめての来院予約よりお問い合わせの上、お気軽にご来院ください。

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