膝の痛みに悩んでいる方で、変形性膝関節症という疾患名を耳にしたことがある方も多いかと思います。変形性膝関節症は進行性。初期のうちは「朝起きると膝が痛い」「歩き始め、膝に違和感がある」などの些細な症状であっても、最終的には歩行が困難となり人工関節が必要になるケースもあります。ただ、初期段階で適切な対処を行えば、痛みを改善しつつ、病気の悪化速度を抑えることは可能です。
そこで今回は変形性膝関節症の早期発見・早期治療介入につながるセルフチェックリストご用意いたしました。あわせて、有効な対処法についても解説いたしますので是非ご参考にしてください。
目次
朝起きて膝に痛みを感じたら要注意
朝起きた直後など、長時間横になった後に動こうとすると、膝が固まったように感じる、など痛みを感じることはありませんか?
こうしたこわばり感や痛みを感じるようになったら、膝に何らかの異常が起こり始めている可能性が高いです。「日中は普段通りに生活できているから大丈夫」といって放置していると知らず知らずのうちに病状が進行してしまう事があります。
【併せてご覧ください】
▶膝のこわばり感や痛みの新しい治療法についてのコラム
痛みの原因
こうした膝の違和感や痛みの原因は、一概に一つであるとは限りません。
膝の関節は、大腿骨(太もも)、脛骨(すね)、膝蓋骨(お皿)の3つの骨と、それを支える靭帯や半月板、軟骨で構成されています。
加齢により軟骨部分がすり減り、大腿骨と脛骨がぶつかることで膝が痛むようになったり、筋肉や靭帯、半月板が損傷することで痛みが生じるなど、痛みには様々な要因があります。
変形性膝関節症
加齢や膝軟骨に大きな負荷がかかると、これによって軟骨がすり減っていきます。この時に軟骨の削りカスが膝の中に溜まり、その結果、滑膜(関節の内側の組織)が炎症を起こします。この炎症こそが痛みの原因です。この炎症が進行していくと、初めは動き始めだけ感じる程度だった痛みも、歩行時や階段の上り下りで頻繁に生じるようになり、最終的には、激しい痛みや関節の変形で歩行が困難になるといったケースもあります。
老化現象だからしかたないとそのまま放置するのではなく、早期に治療することが大切です。
その他考えられる膝の病気
・関節リウマチ
全身の関節に炎症や痛みが生じる疾患です。自分の身体の一部を自分のものではないとして、軟骨や骨を破壊してしまうことで起こる自己免疫疾患と考えられております。
膝関節の炎症が長期間続くと、徐々に関節が破壊され、最悪の場合には歩行困難になってしまう恐れもあります。ですが関節リウマチもまた、症状が進行する前に適切な治療を行えば病気の進行を抑えることができます。
しかし、一度関節破壊が進んでしまうとそれが元に戻ることはありません。早期に発見して早期に治療することが重要です。
・半月板損傷
半月板とは大腿骨と脛骨の間にある軟骨組織の事で、膝関節を保護するクッション的な役割を果たしています。ここに強い衝撃が加わることで半月板に断裂が生じた状態の事を半月板損傷と言います。
半月板が損傷すると膝の曲げ伸ばしの際に痛みを引き起こし、さらに重症化してしまうと、膝に水がたまったりすることがあります。また、急に膝が動かなくなるロッキングという状態になることもあり、ロッキングになると激しい痛みで歩行が困難となってしまいます。
慢性化すると変形性膝関節症を引き起こす可能性があります。逆に、変形性膝関節症の影響から半月板損傷を合併するケースも高齢になるほど多く、日常的に痛みが少なくても起こり得ます[1]。適切な診断と治療が重要です。
半月板損傷についてはこちらのコラムをご覧ください
▶半月板損傷は自然治癒しない?保存療法から手術療法まで有効な治療法を解説
膝の痛み危険度チェック
膝関節が痛いものの、自分で何とか出来るのか、それとも病院でしっかり治療を受けるべきなのか、ご自身の膝の状態が一体どの程度のものなのかわからないという方も少なくないかと思います。
そんな方のため、膝の痛みの危険度を測るチェックリストを作成しました。ご自身がどのくらいのレベルに該当するのか、確認する指標として是非お試しください。
◎膝関節痛の危険度チェックリスト
下記の15問の簡単な問いの該当する項目にチェックをいれてみてください。
いくつチェックがついたでしょうか?
□50歳以上である
□若い頃より体重が増え、肥満体型だ
□歩行中に痛みを感じることがある
□階段では上りより下りで痛む
□ひざが腫れている、もしくは水がたまっている
□寝ているときも痛い
□ひざが曲がりづらく正座をするのが難しい
□しゃがむことが苦痛で、和式のトイレは使えない
□ひざを曲げ伸ばしするとゴリゴリ、ギュッギュッなどと音が鳴る
□走れない(小走りも難しい)
□O脚もしくはX脚だ
□膝を真っすぐに伸ばすことができない
□過去に骨折や脱臼など、ひざ関節のケガの経験がある
□初動時に痛みがある(例:歩き始めた時、立ち上がる時の痛みなど)
□スポーツをしているorスポーツをしていた
チェックが1~3個の方:膝関節痛の危険度○ 変形性膝関節症予備軍
チェックが1つでも当てはまるのであれば、変形性関節症の予備軍であると言えます。
現状は痛みがなく、違和感を感じるかなという段階であっても、今後、日常生活に支障が出てくる恐れもあります。
無理のない範囲で筋トレなどの運動を行い、痛みや違和感が続くようであればクリニックを受診することをおすすめします。
4~10個の方:膝関節痛の危険度△ 変形性膝関節症の初期症状の疑いあり
4個以上のチェックがある場合は、変形性膝関節症の初期症状の可能性が疑われます。変形性膝関節症は進行性の症状です。
年々痛みが増している場合はクリニックで診察を行い、早期治療を行う様にしましょう。
11~15個の方:膝関節痛の危険度× 変形性膝関節症が進行しているかもしれません
変形性膝関節症がすでに進行しているかもしれません。このまま進行すると人工関節手術を余儀なくされたり歩行が困難となる可能性があります。
もし治療を行っていないようであれば早急にクリニックを受診し、早急に治療を開始しましょう。
病状の悪化を防ぐ為に
膝の痛みをこれ以上悪化させないためには食事療法、運動療法、薬物療法など様々な治療方法があります。チェックリストから導き出した危険度別にどんな治療方法が効果的かご説明いたします。
変形性膝関節症予備軍の方:食事療法と運動療法
体重は変形性膝関節症を引き起こす大きな要因の一つ。
実際の体重が適正体重以上だったり、BMI値が25以上の場合は、食事内容の見直しや適度な運動を行う必要があります。
筋肉の素となるタンパク質を意識して摂取するなどバランスの良い食生活を心がけ、軽い筋トレや散歩など適度な運動を行いましょう。
変形性膝関節症の初期症状の疑いがある方:薬物療法と運動療法
まだ病院に行っていないは整形外科を受診しましょう。
膝関節痛が辛い場合には消炎鎮痛薬のロキソニンやカロナールの服用や、ヒアルロン酸注射を打ったりします。これらの長期服用を避けるため、オピオイドといった強めの鎮痛薬を処方する場合もあります。
一概に薬物療法と言ってもその種類は様々です。主治医に相談し、自分に合った薬を処方してもらいましょう。
また、運動療法は変形性膝関節症の治療に効果的であるとして高く推奨されています。薬だけに頼らず、サポーターを活用し膝周りの筋トレなど適度な運動を行うことも大切です。
変形性膝関節症が進行期の疑いがある方:治療方針を固める
既に変形性膝関節症が進行してしまっている場合は、整形外科の主治医と相談し、このまま保存療法で様子を見るのか、それとも手術が必要なのかなどの治療方針を固める必要があります。
また、そのほかにも自由診療に再生医療という選択肢もあります。一般的な病院で行う治療との大きな違いは、一度の施術で長い効果が見込めることと、いずれは人工関節が必要になるという不可逆的な流れをかなりスピードダウンできるということ[2]。
手術したら後戻りはできません。術前に主治医とじっくり相談した上でどんな治療が一番適しているのか納得するまでとことん相談しましょう。
ご自分の膝が再生医療で十分に改善が見込めるかどうかが気になるという方に対しては、事前に適否を判定する問診を行ったり、場合によってはMRI検査も受け付けています。MRI検査では、再生医療の適否だけでなく、レントゲン等のX線撮影で描出される以前の初期病変も確認可能なので、今後の治療方針の決定にも有効です。
MRI診断について詳しくはこちらをご覧ください。
▷MRI即日診断について
膝の状態を知って原因の早期発見・治療を
これまでご説明してきたように、変形性膝関節症は多くの人が心当たりのあるであろう、身近な要素が危険因子となっています。老化現象だから仕方ないと放置すれば進行してしまい、膝の痛みはどんどん強くなってしまいます。それを防ぐには、早期発見と初期段階での治療が大切です。
膝の痛みを限界まで我慢するのではなく、まずは病院を受診し、膝の痛みが何によるものなのか、原因を知ることから始めましょう。
膝の痛みのご相談をご希望の方は、はじめての来院予約からご予約いただけます。
コラムのポイント
- 朝起きた直後の膝痛は変形性膝関節症の可能性あり
- 治療には食事療法、運動療法、薬物療法等がある
- 変形性膝関節症の疑いがある方は原因の早期発見・治療を
よくある質問
変形性膝関節症の初期はどんな症状がありますか?
膝の違和感から痛みまで様々あります。
変形性膝関節症は、軟骨がすり減って炎症を起こすことで痛みが生じる疾患です。一度患ってしまうともとに戻ることは難しく、どんどん進行すると痛みが強くなったり関節が変形し、歩くことすらままならなくなります。そのため、初期に気づいて適切な治療を受けることがカギとなるのです。そうすれば進行スピードを遅らせることができ、手術という最終手段を遠ざけることできます。
その発見のきっかけとなるのが初期症状ですが、次のようなものがあげられます。
・椅子から立ち上ったり動き出すときに、膝がこわばる
・朝起きようとすると膝が痛い
・歩くと膝が痛むが、しばらく歩いていると治まる
・長時間立っていると膝が痛む
・膝の曲げ伸ばしがしづらい
・正座がしづらい
・階段の下りで膝が痛む
ただ、膝関節がどういった状態になっているかは、実際に診察したり検査してみないとわかりません。初期症状であっても実はもっと進行していることもありますし、逆のこともあります。まずは病院を受診して確定診断を仰ぎましょう。そのうえで適切な治療を選択することが、変形性膝関節症の進行を遅らせることにつながります。当院でもご相談に親身にお応えさせていただきますので、下記よりお気軽にご連絡ださい。
>はじめてのご来院予約
変形性膝関節症の症状で膝がしびれることはありますか?
しびれがある場合は他の原因が考えられます。
膝周りにも小さな神経はありますが、軟骨のすり減りで炎症を起こす変形性膝関節症でしびれの症状が起こることはほぼありません。膝にしびれが出る場合は、外傷や腓骨神経麻痺が疑われます。また、足全体にしびれの症状が見られる場合は、腰椎の異常が関係していることも考えられます。
適切に治療するには、まず何が原因でしびれの症状が出ているかを確定する必要がありますので、症状が続くようでしたら一度病院を受診することをおすすめします。
参考
- [1]∧Martin Englund,et al. Incidental meniscal findings on knee MRI in middle-aged and elderly persons. N Engl J Med. 2008 Sep 11;359(11):1108-15.
- [2]∧Pers YM, et al. Adipose Mesenchymal Stromal Cell-Based Therapy for Severe Osteoarthritis of the Knee: A Phase I Dose-Escalation Trial. Stem Cells Transl Med. ;5(7):847-56. 2016.
人工関節以外の新たな選択肢
「再生医療」
変形性膝関節症の方、慢性的なひざの
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