後十字靭帯損傷のテストとは?診断の流れと症状・治療の選択肢を解説

後十字靭帯損傷のテストとは?診断の流れと症状・治療の選択肢を解説

更新日:2026.06.24

「膝を強打してから、なんとなく膝がぐらつく気がする」
「整形外科でテストを受けると言われたが、どんな検査なのか不安」
「後十字靭帯の断裂と診断されたが、本当に手術しなければいけないのか」
このようなお悩みや不安を抱える方は少なくありません。
後十字靭帯損傷は、膝関節の安定性に関わる靭帯の損傷です。
適切な診断がなければ、損傷の程度や合併損傷の有無に合った治療方針を検討しにくくなります。
この記事では、後十字靭帯損傷の診断で行われる代表的なテストと、診断から治療までの流れをわかりやすく解説します。
受傷から間もない方や出血・腫れなどの急性症状がある方は、まずお近くの整形外科を受診してください。

後十字靭帯損傷とは?テスト前に知っておきたい基礎知識

後十字靭帯(PCL)は、脛骨が後方へずれすぎないように支える靭帯です。

損傷すると膝の不安定感や痛みにつながる場合があるため、問診・徒手検査・画像検査を組み合わせた評価が必要になります。

後十字靭帯の役割

後十字靭帯は、膝関節の内部に位置する靭帯のひとつです。

大腿骨と脛骨をつなぐ形で走行し、主に脛骨が後方へ過剰にずれることを防いでいます。

膝の深部で前十字靭帯と交差しており、膝関節全体の安定性にも関わる組織です。

歩行・階段の上り下り・スポーツ動作など、日常の幅広い動作に関係しています。

損傷の程度は、靭帯の一部が傷む部分断裂から、靭帯が完全に切れる完全断裂までさまざまです。

症状の強さには個人差があるため、痛みの程度だけで損傷の重さを判断することはできません。

損傷しやすいシチュエーション

後十字靭帯損傷は、膝を曲げた状態で脛骨に後方又は前方から強い力が加わることで起こりやすいとされています。

スポーツでは、サッカー・ラグビー・バスケットボールなどの接触プレー中に膝を強打するケースが代表的です。

転倒して膝を直接地面に打ちつけた際にも、損傷が生じる場合があります。

交通事故では、車のダッシュボードに膝を強くぶつける「ダッシュボード損傷」が典型例として知られています。

後十字靭帯損傷は前十字靭帯損傷と比べて症状が軽く見えることがあり、受傷直後に見過ごされるケースがある点にも注意が必要です。

「膝を打ったが、少し経てば痛みが引いた」と感じても、不安定感が続く場合は整形外科で評価を受けることが大切です。

前十字靭帯損傷との違い

前十字靭帯と後十字靭帯は、いずれも膝関節の安定性に関わりますが、受傷の仕方や症状には違いがあります。

前十字靭帯損傷は、急な方向転換や着地時のひねりなど、非接触型の受傷で起こることが多いとされています。

損傷時に「ブツッ」という音を自覚する方もいますが、すべての方に起こるわけではありません。

一方、後十字靭帯損傷は膝を強くぶつける外傷で起こることが多く、腫れや痛みが比較的軽く見える場合があります。

そのため、打撲程度と見過ごされ、慢性的な不安定感として後から気づくケースも少なくありません。

複合靭帯損傷として生じるケースもあるため、損傷の全体像を把握する視点が必要です。

主な症状と見逃しやすいサイン

後十字靭帯損傷の主な症状は、膝の痛み・腫れ・不安定感です。

受傷直後には膝関節内に出血が生じ、膝が腫れることがあります。

ただし、前十字靭帯損傷と比べて症状が軽く、数日から数週間で痛みが落ち着くケースもみられます。

慢性期には、階段を下りるときや急な方向転換の際に「膝が抜けるような感覚」を覚える方も少なくありません。

この不安定感は、後十字靭帯が担う後方への制動機能が弱くなっていることと関係するものです。

膝の力が一瞬抜ける感覚が続いている方には、こちらの記事も参考になります。

▶『膝の力が一瞬抜けるのはなぜ?膝折れする4つの原因と受診の目安』

受傷直後の症状が軽くても、慢性的な不安定感や関節の変性につながることがあります。

膝に違和感が続く場合は、早めに整形外科へ受診することをおすすめします。

以下の記事では、後十字靭帯損傷を放置するとどうなるかを解説しています。

▶『後十字靭帯損傷の放置は危険【症状・治療法・リハビリを解説】』

後十字靭帯損傷の診断で行われる代表的なテスト

後十字靭帯損傷の診断では、膝関節の動きを直接確認する徒手検査が行われます。

代表的な検査は、後方引き出しテストとサギングサインです。

後方引き出しテストとは

後方引き出しテストは、後十字靭帯損傷を確認するために行われる基本的な徒手検査です。

患者さまが仰向けに寝た状態で膝を90度に曲げ、検者が脛骨を後方へ押します。

このとき、脛骨が正常より後方へ大きく移動する場合、後十字靭帯の損傷が疑われます。

脛骨の後方移動の程度はミリ単位で評価され、損傷グレードを判断する目安です。

おおむね5mm以下の移動はグレードI、6〜10mmはグレードII、10mmを超える場合はグレードIIIに分類されるのが一般的です。

この分類は、保存療法で経過をみるか、靭帯再建術を検討するかの判断材料のひとつになります。

このテストは、検査に習熟した医師が行うことで、より正確な評価につながりやすい検査です。

急性期で強い腫れや痛みがある場合は、テストを正確に行えないこともあります。

そのため、徒手検査の結果だけで判断せず、画像検査を含めた総合評価が必要です。

サギングサインとは

サギングサインは、後十字靭帯損傷を視覚的に確認するための所見です。

患者さまが仰向けに寝た状態で股関節と膝関節を90度に曲げると、正常な膝では脛骨の前面が一定の位置を保ちます。

後十字靭帯が損傷している場合は、脛骨が重力によって後方へ落ち込んだように見えることがあります。

この状態を左右で比較することで、診断の補助になります。

患者さまが力を抜いた状態で確認できるため、痛みを伴わずに評価しやすい点が特徴です。

ただし、サギングサインだけで診断を確定することは難しく、MRI検査などの画像診断と合わせた評価が必要です。

その他の徒手検査

後十字靭帯損傷の評価では、後方引き出しテストやサギングサイン以外の徒手検査が行われることもあります。

クアドリセプスアクティブテストは、膝を90度に曲げた状態で大腿四頭筋を収縮させ、脛骨が前方に戻る動きを確認する検査です。

後外側回旋不安定性テストは、後十字靭帯損傷に伴う後外側支持組織の損傷を評価する目的で行われます。

後十字靭帯損傷は単独で起こることもありますが、後外側支持組織や前十字靭帯との複合損傷として生じる場合もあります。

複数の検査を組み合わせることで、損傷の範囲を把握しやすくなるでしょう。

診断の流れでは、徒手検査で疑われる所見を確認したうえで、必要に応じて画像検査へ進むのが一般的です。

画像検査で確認する後十字靭帯損傷の診断プロセス

徒手検査で後十字靭帯損傷が疑われる場合は、X線検査やMRI検査を組み合わせて評価します。

損傷の程度や合併損傷の有無を把握することで、治療方針を検討しやすくなります。

X線とMRIの違いと役割

X線検査では、骨折の有無や骨の変形を確認します。

骨の異常を把握するうえで役立つ一方、後十字靭帯や半月板などの軟部組織はX線だけでは詳しく評価できません。

MRI検査は、靭帯・軟骨・半月板などの軟部組織を詳しく確認できる画像検査です。

後十字靭帯の部分断裂・完全断裂・周囲の浮腫などを確認する際に用いられます。

半月板損傷や軟骨損傷などの合併がないかを確認できる点も、MRI検査の重要な役割です。

MRI検査が膝の診断でどのような情報を示すかについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

▶『膝のMRI検査で何がわかる? 知っておきたいMRIとレントゲンの違い』

MRI検査で分かること

MRIで後十字靭帯を評価する場合、まず靭帯の連続性が保たれているかを確認します。

部分断裂では、靭帯の一部に損傷がありながら連続性が残っている状態です。

完全断裂では、靭帯が連続していない状態として確認されます。

MRI所見は、保存療法で対応するか、靭帯再建術を検討するかの判断材料になります。

合併損傷として半月板損傷や軟骨損傷が確認された場合は、それらも含めた治療計画が必要です。

受傷から間もない外傷の場合は、まず整形外科で診察を受け、必要な画像検査について相談しましょう。

後十字靭帯損傷が疑われるときの次のステップ

後十字靭帯損傷の治療方針は、損傷の程度・活動レベル・合併損傷の有無によって異なります。

まずは整形外科で診断を受け、自分の状態に合う治療の選択肢を確認することが出発点です。

保存療法と手術療法の選択基準

後十字靭帯損傷の治療には、大きく分けて保存療法と手術療法があります。

単独の後十字靭帯損傷で、損傷の程度が軽度から中等度の場合は、保存療法が選ばれることがあります。

保存療法では、急性期の安静・アイシング・固定で炎症を管理したうえで、状態に応じてリハビリへ移行していきます。

リハビリでは、大腿四頭筋の筋力強化を中心に、膝の機能回復を目指します。

適切なリハビリを継続することで、日常生活への復帰が期待できます。

一方で、後方不安定性が強く残る場合や症状が続く場合は、治療方針の見直しが必要です。

損傷が重度の場合や、後外側支持組織・前十字靭帯との複合靭帯損傷がある場合は、靭帯再建術が検討されます。

手術後は長期的なリハビリが必要になるため、年齢・活動量・生活背景を含めて医師と相談することが大切です。

「整形外科で手術を勧められたが、できれば避けたい」「手術をするべきか迷っている」「手術をしてもしなくてもよいと言われている」という方は、一度ご自身の膝の状態について詳しく相談することも選択肢の一つです。

後十字靭帯損傷を放置した場合の長期的なリスクについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶『後十字靭帯損傷の放置は危険【症状・治療法・リハビリを解説】』

受診のタイミング

後十字靭帯損傷が疑われる場合は、症状が気になり始めた段階で受診するとよいでしょう。

受傷直後は痛みや腫れが強く、徒手検査が難しい場合もあります。

それでも早めに受診することで、損傷の有無を把握しやすくなります。

「膝を打ったが痛みが引いてきたから大丈夫」と自己判断することは避けましょう。

受傷から時間が経過していても、膝の違和感や不安定感が続く場合は、改めて整形外科で評価を受けることが大切です。

受傷から間もない方、出血・腫れ・打撲などの急性症状がある方は、まずお近くの整形外科を受診してください。

一方、整形外科での治療を続けても慢性的な膝の痛みや不安定感が改善しない方には、MRIデータに基づく詳細な評価という選択肢があります。

後十字靭帯損傷からの回復とリハビリの進め方

後十字靭帯損傷後のリハビリでは、大腿四頭筋を中心とした筋力強化と、膝関節の安定性を高めるトレーニングが中心になります。

進め方は、損傷の程度や治療方針によって段階的に調整されることが一般的です。

保存療法中のリハビリのポイント

保存療法を選択した場合、リハビリは段階的に進めていきます。

急性期の症状が落ち着いたあとは、膝関節周囲の筋肉、特に大腿四頭筋の筋力回復を優先しましょう。
大腿四頭筋には、脛骨が後ろにズレるのを防ぎ、後十字靭帯の働きをサポートする重要な役割があります。そのため、この筋力が落ちてしまうと、膝のグラつきが悪化する原因になります。
次の段階では、膝の可動域を少しずつ回復させながら、バランストレーニングや固有感覚の再教育へ移ります。

固有感覚とは、関節の位置や動きを感知する能力のことです。

靭帯損傷後は固有感覚が低下することがあるため、膝の動的な安定性を取り戻す練習が必要になります。

また、スポーツ復帰を目指す場合は、競技特有の動作に合わせて段階的に負荷を上げていきます。

リハビリを焦って進めると再損傷のリスクが高まるため、医師やリハビリ専門職の指示に沿って取り組みましょう。

膝の安定性を高めるためにできること

後十字靭帯損傷後の膝の安定性を維持するには、日常的な筋力トレーニングの継続が役立ちます。

特に大腿四頭筋とハムストリングスのバランスを整えることが、膝関節への負担軽減につながります。

また、膝サポーターの装着は、膝の不安定性を補助する方法のひとつです。

ただし、サポーターに頼りすぎると筋力低下につながる可能性もあるため、リハビリと並行して使うことが大切です。

サポーター等の装具の選択は、担当医やリハビリ専門職に相談したうえで検討しましょう。

慢性的に後方不安定性が残っている場合、膝関節の軟骨に負担がかかり、変形性膝関節症につながる可能性があります。

リハビリを続けても改善がみられない場合や、不安定感が日常生活に影響している場合は、一度治療方針について相談してみることも大切です。

慢性的な膝の痛みに対する再生医療という選択肢

後十字靭帯損傷そのものは、外傷性の靭帯損傷であるため、整形外科での診断・治療が基本となります。

一方で、治療後も慢性的な膝の痛みが続く場合や、膝関節の変形・軟骨の摩耗などを伴う場合には、膝の状態に応じて再生医療が選択肢となることがあります。

保存療法を続けても痛みが残る場合

後十字靭帯損傷後に保存療法やリハビリを続けても、慢性的な膝の痛みや不安定感が残る方もいます。

「手術を勧められたが、できれば避けたい」「手術をするかどうか迷っている」という場合は、今後の治療方針について改めて相談することが大切です。

再生医療は、患者さまご自身の血液や細胞を用いて、膝の炎症や痛みの改善を目指す治療法のひとつです。

断裂した後十字靭帯そのものを直接修復する治療ではありませんが、後十字靭帯損傷による慢性的な膝の痛みや、軟骨のすり減りなどを伴う場合には、症状の改善を目的として検討されることがあります。

ただし、再生医療が適しているかどうかは、損傷の状態や合併する症状などによって異なります。そのため、医師が膝の状態を十分に確認したうえで判断することが大切です。

再生医療の具体的な内容については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

▶『変形性膝関節症の最新治療 ~再生医療で膝の痛みを改善』

再生医療を検討する前に知っておきたいこと

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当グループでは、2015年3月〜2026年4月までに44,900件以上の治療実績があります。全国11拠点で診療を行っており、整形外科専門医を含む医師31名が在籍しています。

初診ではMRIデータをもとに膝の状態を医師が丁寧に診察し、再生医療の適応可否や、効果の見込み等をご説明しています。

受傷直後の外傷や急性症状がある場合は、まず整形外科で診察を受けてください。

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まとめ

この記事では、後十字靭帯損傷の診断で行われる代表的なテストと、診断から治療・リハビリまでの流れを解説しました。

後十字靭帯損傷は受傷時の症状が軽く見えることがあり、見過ごされるケースもあります。

診断では、後方引き出しテストやサギングサインなどの徒手検査に加え、MRI検査などの画像評価が行われます。

損傷の程度に応じて、保存療法や手術療法といった治療を検討する流れです。

膝の痛みが続く場合には、症状の軽減を目的とした再生医療が選択肢となることもあるでしょう。
受傷から間もない方や急性の症状がある方は、まずお近くの整形外科を受診いただくことをおすすめいたします。

一方で、慢性的な痛みが残る場合には、再生医療が選択肢となることがあります。

当院ではMRIデータをもとに膝の状態を詳しく確認し、お一人おひとりの状態に適した治療の選択肢をご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。

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