ランナー膝(腸脛靱帯炎)とは?症状や原因、治療法・予防法を解説

ランナー膝(腸脛靱帯炎)とは?症状や原因、治療法・予防法を解説

更新日:2026.07.31

走っている最中や走り終えたあとに、膝の外側がズキッと痛む。そんな経験はありませんか?
「使いすぎかな」「そのうち治るだろう」と、つい無理を重ねてしまう方は少なくありません。
その痛みは、腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)、いわゆるランナー膝かもしれません。軽いうちであれば、走り方や運動時の負荷を見直すといった保存療法で改善が期待できるとされています。
本記事では、ランナー膝の正体や痛みが起こる仕組み、予防法から治療法、競技への復帰までを整形外科専門医の視点でわかりやすく解説します。
走るのが好きな方こそ、原因を正しく知ることが、痛みと付き合わずに走り続けるための第一歩になります。

ランナー膝(腸脛靱帯炎)とは?主な原因や症状を解説

ランナー膝とは、太ももの外側を縦に走る腸脛靱帯という組織が、膝の曲げ伸ばしの繰り返しで刺激を受け、膝の外側に痛みを起こした状態です。

本章では、この腸脛靱帯炎「ランナー膝」の概要を解説します。
痛みの場所による違いを詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
▶ランニングで膝が痛む原因を部位別に知りたい方はこちら

ランナー膝は、マラソンやジョギングを習慣にしている方に多くみられる、使いすぎ(オーバーユース)による障害のひとつです。

ランナー膝の症状と痛む場所

ランナー膝の痛みは、膝の外側、太ももの骨の出っ張り(大腿骨外顆:だいたいこつがいか)のあたりに出るのが特徴です。鈍く重い痛みや、焼けるような痛みとして感じられることがあります。

初期は走っているときだけ痛み、休むと引いていくことが多いものです。進行すると、階段や坂道を下りるときに痛みが強まり、やがて歩くだけでも痛むようになることがあります。突然激しく痛むよりも、少しずつ症状が現れてくる経過をたどりやすいとされています。

ランナー膝の痛みを起こす仕組み

腸脛靱帯は、骨盤の外側から膝の下まで伸びる帯状の組織です。膝を曲げ伸ばしすると、この靱帯が大腿骨外顆の出っ張りの上を行き来します。ランニングのように膝の曲げ伸ばしを繰り返す運動では、この部分に摩擦や圧迫による刺激が繰り返し加わり、痛みや炎症が生じると考えられています

特に、下り坂や長距離のランニングでは、膝が軽く曲がった状態で着地を繰り返すため、腸脛靱帯への負担が大きくなりやすいとされています。痛みは組織からの注意のサインであり、無理を続けると回復までに時間がかかることがあります。

ランナー膝になりやすい人の特徴

ランナー膝は、いくつかの要因が重なって起こりやすくなるとされています。なかでも、お尻まわりの筋肉(股関節を支える筋肉)の働きが弱いことは、関連が指摘されています。骨盤や膝の安定性が保ちにくくなり、腸脛靱帯への負担が増えやすいためです。

また、O脚気味の方や、下り坂を多く走る方、走る距離を急に増やした方は、なりやすいとされています。ウォーミングアップ不足や、すり減ったシューズなども影響する可能性があります。こうした要因はひとつとは限らず、複数が重なって不調につながることが多いです。

当院でも、膝の外側の痛みについて、原因がわからないとご相談をいただくことがあります。気になる症状があるときは、お気軽にご相談ください。

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ランナー膝のセルフチェック

ランナー膝かどうかを正確に見分けるには医療機関での診察が必要ですが、痛みの出方には特徴があります。ご自身の状態を把握する手がかりとして、当てはまる項目を確認してみましょう。

膝の外側が痛むときのチェックポイント

次のような項目に心当たりがあるかどうかを、確認してみてください。あくまで傾向を知るための目安であり、これだけで自己判断せず、当てはまる場合は医療機関で確認することが大切です。

  • 走っているときや走り終えたあとに、膝の外側が痛む
  • ・階段や坂道を下りるときに、痛みが強くなりやすい
  • ・膝の外側の出っ張り付近を押すと、痛みや違和感がある
  • ・走る距離やスピードを最近増やしてから、症状が出始めた

これらに当てはまる場合、ランナー膝の可能性があります。痛む場所や症状の現れ方には個人差があるため、気になるときは早めに整形外科を受診しましょう。

医療機関を受診すべきサイン

痛みが続くときは、無理を重ねずに医療機関へ相談することが回復への近道です。特に、次のような症状があるときは早めの受診をおすすめします。

  • ・膝に強い腫れや熱感、はっきりとした赤みがある
  • ・膝が引っかかる、急にがくっと力が抜ける感じがある
  • 体重をかけられないほど痛く、歩くのがつらい
  • ・転倒や膝をひねるなど、はっきりとした外傷をきっかけに強い痛みが生じた

なかでも、急に強く痛んで歩けない場合は、整形外科を受診してください。

ランナー膝の予防法

ランナー膝は、走り方や日頃のケアを見直すことで、発症リスクを減らせる可能性があります。痛みが出てから対処するのではなく、普段から膝への負担を減らすことを意識しましょう。

ウォームアップとストレッチの習慣づけ

走る前後の準備とケアは、膝の負担をやわらげランナー膝を予防する助けになります。走り出す前には、軽い動きで筋肉や関節をほぐしておくと、運動を始めたときの負担を和らげることが期待できます。

走ったあとには、太ももの外側やお尻まわりの柔軟性を保つストレッチを取り入れるとよいでしょう。ただし、痛みが強いときは無理にストレッチをせず、症状に応じて安静にしたり、必要に応じて医療機関へ相談したりしましょう。

シューズ・走行環境とフォームの見直し

走る環境やフォームも、膝への負担を左右します。クッション性が保たれた、足に合ったシューズを選び、すり減ってきたら早めに替えることが大切です。下り坂や硬い路面を長く走ると刺激が増えやすいため、コースの組み方も見直したい点です。

練習量は一度に大きく増やさず、体の様子をみながら少しずつ積み上げていきましょう。お尻まわりの筋力を高めることも、膝の安定につながると考えられています。走り方や練習計画の細かな見直しについては、こちらの記事もあわせてご確認ください。

▶ランニング全般の膝の痛み・走り方の見直しはこちら

ランナー膝の治療法

ランナー膝の治療は、まず体への負担が少ない保存療法から検討するのが基本です。痛みが長引いたり繰り返したりする場合には、ほかの選択肢が考えられることもあります。

保存療法(安静・アイシング・物理療法・薬物)

ランナー膝の治療で第一に検討されるのが保存療法です。多くの場合、複数の方法を組み合わせながら、痛みや炎症の改善を図ります。

最初に大切なのが、活動量の調整です。まずは走る量を減らし、痛みのある時期は無理をせず負荷を下げることが基本になります。とりわけ下り坂や長い距離は刺激が強まりやすいため、痛みが落ち着くまでは控えめにするとよいでしょう。完全に走るのをやめるかどうかは症状によって異なるため、対応に迷う場合は、医療機関へ相談しましょう。

腫れや熱感があるときは、その部分を冷やして炎症を落ち着かせる方法がとられます。痛みが強い時期には、痛み止め(消炎鎮痛薬)の内服が用いられることもあります。これらは炎症や痛みを和らげることを目的としたものです。

あわせて、理学療法士の指導のもとで行う物理療法やリハビリが組み合わされることもあります。痛みの程度や経過によって、どの方法をどう組み合わせるかは変わってきます。自己流で進めず、医療機関の方針に沿って取り組むことが大切です。

ストレッチ・筋力トレーニング

痛みが落ち着いてきたら、ランナー膝の再発を防ぐための運動療法が中心になります。安静で痛みがやわらいでも、負担がかかりやすい体の使い方が残っていると、走り始めたときに症状がぶり返しやすいためです。

なかでも中心になるのが、お尻の横にある筋肉(中殿筋など、股関節を外側に支える筋肉)の強化です。これらの筋肉が弱いと、着地のたびに骨盤や膝がぶれやすくなり、腸脛靱帯への負担が増え、ランナー膝につながると考えられています。お尻まわりの安定性を高めることは、ランニング時の膝への負担を軽減することにつながると考えられています。

あわせて、太ももの外側やお尻まわりの柔軟性を保つストレッチも組み合わせるとよいでしょう。ただし、腸脛靱帯のストレッチを単独で改善を目指すのではなく、筋力トレーニングを中心に、必要に応じて複数の運動療法を組み合わせることが重要と考えられています。

運動の種類や強さは、痛みの程度によって調整する必要があります。痛みを我慢して回数や負荷を増やすと、かえって炎症を長引かせることがあります。自己判断で負荷を上げず、医療機関の指示のもとで段階的に進めると安心です。

長引くひざの痛みには再生医療という選択肢も

保存療法を続けても痛みが長引く、繰り返すといった慢性的な膝の痛みに対しては、ランナー膝(腸脛靭帯炎)以外の疾患の可能性もあり、選択肢のひとつとして再生医療が検討されることがあります。再生医療は、膝の関節内へ注射を行い、関節内で起きている炎症やダメージに伴う痛みの軽減を目的とした治療です。ご自身の血液や細胞を用いる点が特徴です。

当院では、PRP-FD(PCF-FD™)治療と培養幹細胞治療をおこなっておりどちらの治療も日帰りで受けられ、ご自身の組織を用いるため拒絶反応のリスクが低いとされています。自由診療のため費用は医療機関によって異なります。すべての方に同じ効果が期待できるわけではないため、特徴をよく理解したうえで医師と相談しながら検討することが大切です。

まずは、ご自身の膝の状態を正確に知ることが、適切な治療の第一歩です。当院では、待ち時間なく膝の詳細な状態がわかる「MRひざ即日診断」を実施しております。

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回復とランニング復帰までの期間の目安

ランナー膝の回復までの期間は、痛みの程度やケアの状況によって幅があります。一般的な目安として、保存療法を続けた場合、多くは数週間から数か月のうちに軽快が期待できるとされていますが、個人差があります。

復帰を焦って早く走り始めると、ランナー膝の症状がぶり返すことがあります。痛みが引いたあとも、走る距離や強度は少しずつ戻していくことが大切です。ランナー膝は改善と悪化を繰り返しやすい面もあるため、回復したあとも予防を続けると安心です。

その他ランニングで起こりやすい膝の障害

走る方に起こりやすい膝の不調は、ランナー膝のほかにもあります。痛む場所によって考えられる障害が異なるため、参考として代表的なものを紹介します。痛む場所だけで自己判断せず、正確な見分けは医療機関で確認することが大切です。

膝蓋大腿疼痛症候群(前側型)

膝蓋大腿疼痛症候群(しつがいだいたいとうつうしょうこうぐん)は、膝のお皿(膝蓋骨)の周辺や前面に痛みが出るものです。お皿の動きの乱れや、お尻まわりの筋力の弱さが関わるとされ、階段の下りや長く座ったあとに痛みやすい傾向があります。痛みが外側のランナー膝とは、痛む場所が異なります。

▶ランニングによる膝の痛みを部位別に知りたい方はこちら

鵞足炎(内側型)

鵞足炎(がそくえん)は、膝の内側、関節よりやや下のあたりに痛みが出るものです。内側にかかる繰り返しの負担が背景にあるとされ、痛む場所が外側のランナー膝とは異なります。

膝の内側の痛み・鵞足炎について詳しくはこちら

膝蓋腱炎(ジャンパー膝)

膝蓋腱炎(しつがいけんえん)、いわゆるジャンパー膝は、お皿の下のあたりに痛みが出るものです。ジャンプや着地など、垂直方向の負荷の繰り返しが関わるとされ、下り坂で悪化しやすいランナー膝とは痛む場所や動作の傾向が異なります。

膝のお皿の下の痛み・ジャンパー膝について詳しくはこちら

ランナー膝の検査・診断

ランナー膝は、医師が痛みの出方や経過をていねいに確認しながら診断します。自己判断だけで決めつけず、気になる症状があるときは医療機関で確認することが大切です。

問診と徒手検査

診察ではまず、いつ・どこが・どのように痛むか、走る習慣や練習量などを問診で確認します。あわせて、痛む部位を直接確認する徒手検査が行われます。痛みの場所や動作との関係を手がかりに、考えられる原因を整理していきます。

グラスピングテストによる診断

グラスピングテストは、医療機関で行われる徒手検査のひとつです。医師が腸脛靱帯を大腿骨外顆の上で押さえながら膝を曲げ伸ばしし、膝が軽く曲がった角度で痛みが出るかを確認します。これは医師が状態を確認するための検査であり、結果だけで診断が確定するものではなく、ほかの所見とあわせて総合的に判断されます。

画像検査でわかること

ランナー膝は問診や徒手検査をもとに診断されることが多い疾患です。一方で、他の病気やけがとのとの見分けや状態の確認のために画像検査が用いられることがあります。レントゲンでは骨の状態を、MRIでは靱帯等の軟部組織の様子を確認できます。どの検査を行うかは、症状や経過をふまえて医師が判断します。MRI検査でわかることについては、こちらの記事もご確認ください。

膝のMRI検査で何がわかる?レントゲンとの違い

まとめ|ランナー膝は早期の原因対処と段階的復帰が回復の鍵

ランナー膝(腸脛靱帯炎)は、膝の曲げ伸ばしの繰り返しによって、膝の外側に痛みが起こる障害です。多くは、走る量の調整やフォームの見直し、適切なセルフケアによって改善が期待できます。「もう走れないのかもしれない」と諦める必要はありません。原因を正しく知り、自分に合った対策を重ねていけば、走り続ける道は十分に開けます。

大切なのは、ご自身の膝の状態を正確に知ることです。当院では、待ち時間なく膝の詳細な状態がわかる「MRIひざ即日診断」を実施しております。膝の痛みが気になる方は、原因を確かめる第一歩として、お気軽にご相談ください。

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よくある質問

ランナー膝かどうか確かめる方法は?

膝の外側が走行中や走行後に痛む、下り坂や階段の下りで痛みが強まる、外側の出っ張り付近を押すと痛む、といった特徴が手がかりになります。ただし、これらだけで自己判断するのは難しいものです。正確な見分けには医師の診察や検査が必要ですので、気になるときは整形外科を受診しましょう。

ランナー膝は何日くらいで治る?

回復までの期間は、痛みの程度やケアの状況によって幅があり、一律に何日とは言い切れません。一般的な目安として、保存療法を続けた場合、多くは数週間から数か月のうちに回復が期待できるとされていますが、個人差があります。痛みが引いたあとも、負荷は少しずつ戻すと安心です。

ランナー膝でやってはいけないことは?

痛みを我慢して走り続けることは、避けたい行動です。炎症が起きている状態で負荷をかけ続けると、回復が遅れたり症状が長引いたりすることがあります。また、痛みが強いときの無理なストレッチも悪化を招くことがあります。負荷のかけ方に迷うときは、医療機関の指示のもとで進めましょう。

ランナー膝になりやすい人は?

お尻まわりの筋力が弱い方や、O脚気味の方、下り坂を多く走る方、走る距離を急に増やした方は、なりやすいとされています。ウォーミングアップ不足や、足に合わないシューズも影響する可能性があります。複数の要因が重なって起こることが多いため、思い当たる点があれば見直してみましょう。

ランナー膝でも走り続けていい?

痛みがあるうちは、無理に走らず負荷を下げることをおすすめします。炎症が起きている状態で走り続けると、回復が妨げられることがあります。痛みが引くまで距離や強度を落とし、医療機関の指示のもとで少しずつ戻していくと、ぶり返しを防ぎやすくなります。

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