膝の外側の痛みといえば腸脛靭帯炎(ランナー膝)を思い浮かべる方は少なくないと思いますが、一概にそうとも言い切れません。ここでは、膝の外側の痛みを緩和するためのストレッチ、マッサージなどのセルフケア法、痛みの原因として考えられる疾患、一般的な医療機関で行われる治療法を解説します。
また、最近関節治療でも広まりつつある再生医療(自分の組織を使って損傷部位の修復を促す新しい治療)が膝の「外側」の痛みにどう役立つのか、今までの治療の課題がどう改善されつつあるのかといった点についてもご紹介します。
目次
外側の痛みの緩和に有効なストレッチ・筋トレ・マッサージ
膝の外側が痛むという場合は、腰から膝周辺にかけての身体の外側の筋肉が弱っていることが考えられます。具体的には外側広筋、腸脛靭帯、大腿筋膜張筋あたりです。痛みの緩和には、その辺りのトレーニングやマッサージが有効です。まずはご自宅でもできるセルフケア法をご紹介します。
ストレッチ
筋トレ
脚の外側に位置する外側広筋、腸脛靭帯、大腿筋膜張筋は、脚を外側に開く時に機能します。よって、外側が痛む場合は、膝が閉じる方向に抵抗を加えた状態で、外に開くような動きをするトレーニングが有効です。
実際には、座った状態で太腿にトレーニング用のバンドを付けて、外に広げる運動を繰り返します。もしくは手で押さえても結構です。20回ぐらい行って膝の外側が疲れてくれば、きちんと鍛えられていることになります。
![膝の筋トレ手順①](https://www.knee-joint.net/column/wp-content/uploads/2022/05/pc_no22-3.jpg)
寝た状態であれば、横を向いてv運動も有効です。余裕のある方はトレーニングバンドを巻いて、少し抵抗を加えても良いでしょう。
![膝の筋トレ手順②](https://www.knee-joint.net/column/wp-content/uploads/2022/05/pc_no22-4.jpg)
マッサージ
まず、膝の外側、膝からお尻にかけての筋肉を手のひら全体で圧迫し、ほぐしていきます。
痛みの原因は「どこを押すと痛むか」で異なる
セルフケアで改善が認められない場合は医療機関の受診をご検討ください。膝の外側が痛む場合、原因は腸脛靭帯の炎症、外側半月板の損傷、外側側副靭帯の損傷などが考えられます。確定診断は、画像検査や医師による診察に基づいて行われますが、その際、どこが痛むのかを具体的に伝えられれば、より正確な診断につながります。
とはいえ、痛む箇所を正確に伝えるのは意外に難しいものです。そこで、ここではどなたでも試していただくことができる、「押してわかる」痛んだ部位の見つけ方をご紹介したいと思います。
腸脛靭帯の炎症(ランナー膝)の場合
腸脛靭帯はオレンジ色のマーカーをつけた位置に伸びていて、炎症を起こしている場合はオレンジ色で塗られているあたりが痛みます。
長距離を歩いたり重量物を運搬する仕事など、ひざへ繰り返し負荷がかかるに動作が多い方に起こる可能性があります。
トラック競技やマラソンのランナーでよく見られることから「ランナー膝」とも呼ばれます。
外側半月板の損傷の場合
なお、外側半月板は膝の外側をぐるっと囲むように存在しているので、前の方なのか、真横なのか、やや後方なのかについてもチェックしておくと良いでしょう。
なお、高齢の方でこの部位が痛む方、X脚の方は
変形性膝関節症の可能性もあります。
外側側副靭帯の損傷の場合
治療法
膝外側の痛みの原因として考えられる疾患の、具体的な治療法をご紹介します。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)
腸脛靭帯炎は、膝の曲げ伸ばしを繰り返した結果、腸脛靭帯と大腿骨の外側の出っ張り部分(外側上顆)が擦れて炎症を起こしている状態です。つまり原因はオーバーユース(使いすぎ)なので、対処法としてはまず患部を冷やすことと、安静・休養が求められます。場合によっては痛み止めを服用します。ほとんどの場合は手術の対象とはなりませんが、繰り返し再発する場合には腸脛靭帯の部分切除や延長術、もしくは引っかかる部分の骨や軟部組織の切除も検討します。
![腸脛靭帯炎(ランナー膝)](https://www.knee-joint.net/column/wp-content/uploads/2022/05/pc_no22-11.jpg)
外側側副靭帯の損傷
外側側副靭帯は、自分自身の動きの癖や転倒などで損傷を受けることは稀で、ほとんどの場合、タックルなど外側から強い打撃を受けることで生じます。ラグビー、サッカー、格闘技などの選手でよく見られます。
![外側側副靭帯の位置と役割](https://www.knee-joint.net/column/wp-content/uploads/2022/05/pc_no22-12.jpg)
【保存療法】
ほとんどの場合筋トレによる保存療法が行われます。この場合の筋トレの目的は、太ももの筋肉を鍛えることで、外側側副靭帯にかかる負担を軽減することです。もしくは筋肉の代替としてサポーターなどの装具で膝を固定することもあります。
【手術療法】
靭帯が断裂していても、それが側副靭帯単独であれば手術は行わず、保存療法で対処することがほとんどです。ただし複数の靭帯が損傷を受けている場合は、靭帯の再建手術を行うこともあります。再建時には、患者さん自身のハムストリングス(太ももの裏側に位置する筋肉)の一部を使用することが多いです。
半月板損傷
半月板損傷は、膝関節内の半月板に亀裂が入ったり、欠けたりしている状態です。加齢の影響で起こりやすくなりますが、若い方でもスポーツや事故などの外傷でも起こりえます。長引くと慢性化して変形性膝関節症に発展する可能性もあるので、早期からの適切な治療が重要です。
■半月板損傷の種類
縦断裂 | 横断裂 | 水平断裂 | 変性断裂 | |
損傷の状態 | 半月板が縦に断裂 | 半月板が横に断裂 | 半月板の表面が めくれるように 損傷 |
半月板がバサバサと ささくれるように損傷 |
原因 | ケガなどの外傷性の要因 | ケガなどの外傷性の要因 | ケガなどの外傷性の要因 | 加齢の影響 |
断面図 | ![]() |
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【保存療法】
ロッキング(ひざが固まって動かなくなる症状)がなく症状が痛みだけの場合は、3カ月程度を目安に保存療法を行います。具体的には、筋力強化のための理学療法やヒアルロン酸注射、薬物治療などです。
【手術療法】
3カ月間の保存療法で改善が認められない場合に検討します。手術方法は、切れたり避けたりした半月板を縫い合わせる縫合術と、損傷した半月板を取り除く切除術があります。将来的な関節変形のリスクを抑えるため、できるだけ縫合術が選ばれます。
半月板損傷の治療やリハビリについてはこちらのコラムで詳しくご紹介しています。
▷半月板損傷は自然治癒しない?有効な治療法を専門医が解説
▷半月板損傷のリハビリ【自宅でできる13の方法】
膝の外側の痛みにお悩みの方は一度検査を
膝の外側の痛みと言っても、原因はさまざまです。放置することで症状が悪化してしまうこともあります。痛みが続くときは自己判断せず、まずは医療機関で検査を受けましょう。
当院では、MRI検査をおすすめしています。レントゲンは骨の外見の状態しかわからないのに対し、MRIは骨の内部や骨以外の組織(半月板、靭帯、軟骨、筋肉など)の状態も詳細に確認することが可能です。そのため、膝の状態に合わせてより最適な治療法をご提案することができます。
MRI | レントゲン | |
右ひざの画像 |
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特徴 | 骨の内部や骨以外の組織の撮影が可能 | 骨の外見のみの撮影が可能 |
確認可能な 膝の組織 |
・骨、半月板、筋肉、靭帯、軟骨など | ・骨(膝蓋骨・大腿骨・脛骨) |
おすすめはMRI検査
膝の病気やケガは早期に適切な治療を行わなければ、進行して歩くことが困難になるケースも少なくありません。そうならないためにも、原因をきちんと調べておくことが大切です。
当院でも膝の違和感や痛みの原因がわからないと、ご相談をいただくことが多々あります。そういったときには、MRIひざ即日診断で詳しく調べて、何が原因か、どうすれば良いかをわかりやすくご説明しています。同じようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
コラムのポイント
- 膝の外側が痛む場合は、腰から膝周辺にかけての身体の外側の筋肉が弱っていることが多い
- 膝の外側が痛む原因は腸脛靭帯の炎症、外側半月板の損傷、外側側副靭帯の損傷などが考えられる
- 状態によっては、膝の外側の痛みの治療にも再生医療は奏功する
人工関節以外の新たな選択肢
「再生医療」
変形性膝関節症の方、慢性的なひざの
痛みにお悩みの方は是非ご検討ください。
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