ベーカー嚢腫とは?|発症する原因・症状や治療法を解説

ベーカー嚢腫とは?|発症する原因・症状や治療法を解説

更新日:2026.07.11

「膝の裏に、やわらかいふくらみがある。」
「曲げ伸ばしのときに、突っ張る感じやつまり感がある。」
「いつの間にかコブのようなものができている」と気づいて不安になった方も多いのではないでしょうか。
その症状は、ベーカー嚢腫(のうしゅ)の可能性があります。 ベーカー嚢腫は、膝裏に関節液がたまってふくらむ、多くは良性の腫瘍です。自然に小さくなることもありますが、背景に膝の病気が隠れていることも少なくありません。
本記事では、ベーカー嚢腫の原因や症状から、ご自身でできるケア、医療機関での治療法までをわかりやすく解説します。ベーカー嚢腫について気になる方は最後までご覧ください。

目次

ベーカー嚢腫とは|膝裏に水がたまる良性のふくらみ

ベーカー嚢腫とは、膝の裏側にある滑液包(かつえきほう:関節の動きを滑らかにする袋)に関節液がたまり、ふくらんだ状態をいいます。膝窩嚢腫(しっかのうしゅ)とも呼ばれ、その多くは良性のふくらみとされています。

見た目は、膝の裏にピンポン玉のようなコブができたように見えることがあります。触れると弾力があり、膝を伸ばすと硬く張り、曲げるとやわらかくなる傾向があります。痛みを感じない方も多く、入浴時や家族からの指摘で初めて気づくケースもあります。

膝裏の痛みや腫れには、ベーカー嚢腫以外の原因もあります。膝裏のふくらみや痛み全般については、別の記事でも詳しく解説しています。

膝の裏が痛い・腫れるのはなぜ?原因や治し方・ストレッチ方法を解説

ベーカー嚢腫は良性?悪性?放っておいて大丈夫なのか

ベーカー嚢腫の多くは良性で、ただちに危険なものではないとされています。ただし、「放っておいて大丈夫」と自己判断で様子を見続けるのは避けましょう。

まれに、悪性の腫瘍やそのほかのしこりが膝裏にできることもあります。
・急に大きくなる
・硬くて動かない
・夜間や安静時に痛む
といった変化があるときは医療機関を受診しましょう。膝裏のふくらみの原因はさまざまであり、ベーカー嚢腫かどうかは診察や必要な検査を行ったうえで判断されます。

子どもと大人で違うベーカー嚢腫

ベーカー嚢腫は、子どもにも大人にもみられますが、その背景は異なる傾向があります。子どもの場合は、膝の病気がないのに生じる特発性(とくはつせい:はっきりした原因が見当たらないこと)が多く、経過観察で自然に小さくなることも少なくないとされています。

一方、大人のベーカー嚢腫は、変形性膝関節症や半月板損傷など、膝関節の病気を背景に生じることが多いとされています。同じ膝裏のふくらみでも、年代によって考え方が変わる点を押さえておきましょう。

ベーカー嚢腫の原因|なぜ膝裏に水がたまるのか

ベーカー嚢腫は、膝関節の中で増えた関節液が、膝裏の滑液包に流れ込んでたまることで生じます。その背景には、関節液が増える膝の病気と、関節液が膝裏へ流れ込みやすくなる構造的な仕組みが関係しています。

膝関節は本来、適量の関節液で滑らかに動いています。何らかの理由で関節内に炎症が起きると関節液が増え、膝裏側へ押し出されてふくらみを作ると考えられています。

関節液が戻りにくくなる仕組み

膝の関節と膝裏の滑液包は、細い通り道でつながっています。この通り道は、関節から滑液包へ関節液が流れ込みやすく、逆方向には戻りにくい「一方向の弁」のような構造になっていると考えられています。

膝を曲げ伸ばしするたびに、関節内の圧力で関節液が滑液包側へ少しずつ送り込まれます。ところが逆流しにくいため、たまった関節液が関節へ戻りにくくなります。この仕組みがあるため、関節内の炎症が続くとベーカー嚢腫になりやすいとされています。

背景にある膝の病気(変形性膝関節症・半月板損傷など)

大人のベーカー嚢腫は、関節液を増やす膝の病気が背景にあることが多いとされています。代表的なものとして、次のような疾患が挙げられます。

  • ・変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
  • ・半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
  • ・関節リウマチ(かんせつりうまち)

これらの病気では関節内に炎症が起こり、関節液が増えやすくなります。その結果として膝裏に関節液がたまり、ベーカー嚢腫が生じると考えられています。つまり、ベーカー嚢腫は原因となる病気によって生じることが多く、膝裏のふくらみだけでなく、その原因となっている膝の状態を確認することが大切です。

膝に水がたまる仕組みや、関節液が増える原因については、別の記事で詳しく解説しています。

膝に水が溜まる原因は?初期症状チェックと対処法|抜いた方がいい目安

ベーカー嚢腫の症状と特徴|こんなサインに注意

ベーカー嚢腫の症状は、ふくらみの大きさや背景の病気によってさまざまです。無症状のこともあれば、膝裏の圧迫感や動かしづらさを感じることもあります。代表的な症状と、注意したいサインを整理します。

主な症状(圧迫感・つっぱり・正座や歩行のしづらさ)

ベーカー嚢腫でよくみられる症状には、次のようなものがあります。

✅ 膝裏に弾力のあるふくらみ・コブを触れる
✅ 膝を深く曲げると、膝裏に圧迫感やつっぱりを感じる
✅ 正座やしゃがみ込みがしづらい
✅ 長く歩いたあとに膝裏が重だるくなる

ベーカー嚢腫が小さいうちは、症状をほとんど感じないこともあります。一方で大きくなると、膝裏の張りや突っ張る感じが強まり、膝の曲げ伸ばしがしづらくなることがあります。気になる症状があるときは、無理に動かさず医療機関で相談しましょう。

破裂したときのふくらはぎの痛み・腫れ(血栓との見分け)

ベーカー嚢腫が大きくなると、まれに袋が破れて、中の関節液がふくらはぎへ流れ出ることがあります。すると、ふくらはぎに痛みや腫れ、赤みが出て、急に膝裏からふくらはぎにかけて強い痛みが現れることがあります。

このときに注意したいのが、深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう:エコノミークラス症候群)との見分けです。深部静脈血栓症は、血の塊が肺に流れて肺塞栓症を引き起こすこともある病気です。ふくらはぎの腫れや痛みという点でベーカー嚢腫の破裂と症状が似ている場合があり、そのため、症状だけでは判断が難しく、医療機関での診察や検査による確認が必要です。

ベーカー嚢腫は自分でケアできる?やってよいこと・避けること

ベーカー嚢腫そのものをセルフケアだけで改善することは難しいですが、背景にある炎症や膝への負担を軽減し、症状の悪化を防ぐためにできるケアがあります。

ただし、これから紹介するセルフケアは、自己判断で始めるのではなく、医療機関で相談したうえで取り入れることが大切です。痛みが強いとき、ふくらはぎの腫れが疑われるときは中止し、受診を優先しましょう。

やってよいセルフケア(アイシング・安静・サポーター・湿布)

膝裏の張りや炎症をやわらげるために、ご自宅でできるケアには次のようなものがあります。いずれも医療機関の指示のもとで取り入れましょう。

  • ・急に腫れて熱感があるときは、保冷剤や氷のうで膝裏を冷やす(アイシング)
  • ・痛みや張りが強い日は、長時間の歩行やしゃがみ込みを控えて安静にする
  • ・サポーターで膝を軽く支え、膝への負担をやわらげる
  • ・痛みがあるときは、医師に相談のうえで湿布を活用する

湿布を貼るときは、ふくらみの中心ではなく、膝裏全体をやさしく覆うように貼ると安定しやすくなります。冷やすか温めるかは状態によって変わるため、判断に迷うときは医療機関の指示のもとで対処しましょう。

やってはいけないこと(強く揉む・自己流の処置)

ベーカー嚢腫に対して、避けたほうがよい行為もあります。良かれと思った行動が、かえって炎症を強めてしまうことがあるためです。

  • ・ふくらみを強く揉んだり、押しつぶそうとしたりする
  • ・自分で針を刺すなど、自己流で中身を出そうとする
  • ・痛みを我慢して、無理に膝を深く曲げ伸ばしする
  • ・リンパマッサージなどで膝裏を強く刺激する

特に、膝裏のふくらみを強く揉む・潰そうとする行為は避けてください。袋が破れて炎症が広がったり、感染を起こしたりする恐れがあります。膝裏を直接刺激するケアではなく、周囲の筋肉をやさしくほぐす範囲にとどめましょう。

自然に小さくなるのはどんなとき

ベーカー嚢腫は、背景にある炎症が落ち着くと、関節液の量が減ってふくらみが小さくなることがあります。特に、子どもの特発性のベーカー嚢腫は、経過観察で自然に小さくなることも少なくないとされています。

大人の場合も、変形性膝関節症などの背景の状態が落ち着けば、ふくらみが小さくなることがあります。一方で、背景の炎症が続いていると、小さくなっても繰り返しやすい傾向があります。自然に小さくなるかどうかは状態によって異なるため、まずは膝の状態を確認してもらうことが大切です。

ベーカー嚢腫の治療法|穿刺・注射・手術

ベーカー嚢腫が大きく、症状が強い場合や、背景の病気がある場合には、医療機関での治療が検討されます。ここでは、医療機関で行われる代表的な治療法を整理します。実際にどの方法を選ぶかは、診察や検査の結果をもとに医師が判断します。

穿刺吸引・ステロイド注射

ベーカー嚢腫が大きく、圧迫感や動かしづらさが強い場合には、たまった関節液を抜く穿刺吸引(せんしきゅういん)が行われることがあります。注射針でベーカー嚢腫の中の関節液を吸引する処置で、膝裏の張りをやわらげる目的で行われます。

また、炎症を抑えるためにステロイドを注射することもあります。ただし、これらの処置で一時的にベーカー嚢腫が小さくなっても、背景の炎症が続いていると関節液が再びたまることが少なくないとされています。穿刺吸引は症状を軽くする処置であり、原因となる病気への治療とは分けて考える必要があります。

関節鏡手術と再発について

ベーカー嚢腫が繰り返す場合や、背景に半月板損傷などがある場合には、関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ:関節鏡を入れて行う手術)が検討されることがあります。膝の中の状態を直接確認し、関節液が増える原因や膝裏への通り道に対して処置を行う方法です。

ただし、手術を行っても背景の炎症が残っていると、ベーカー嚢腫が再発することがあるとされています。治療を考えるうえでは、ふくらみだけに注目するのではなく、関節液が増える背景の状態まで含めて検討することが大切です。

繰り返す・治らないとき|背景にある膝の問題

ベーカー嚢腫が何度も繰り返す、なかなか小さくならないという場合は、膝裏のふくらみだけでなく、その背景にある膝の状態に目を向けることが大切です。ふくらみは結果であり、原因となる膝の病気が続いている可能性があるためです。

ベーカー嚢腫の多くは変形性膝関節症などが背景

大人のベーカー嚢腫の多くは、変形性膝関節症や半月板損傷、関節リウマチなどを背景に生じるとされています。これらの病気で関節内の炎症が続くと、関節液が増えてベーカー嚢腫を繰り返しやすくなります。

そのため、繰り返すベーカー嚢腫では、背景にある膝の病気を確認し、その状態に合わせて対応していくことが大切です。背景の膝の状態については、それぞれの病気を扱った記事でも詳しく解説しています。

変形性膝関節症の治し方を徹底解説!治療ごとのメリット・デメリットは?

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慢性的な膝の痛みに対する選択肢(再生医療)

背景にある変形性膝関節症などによって、慢性的な膝の痛みが続いている場合には、保存療法・手術療法に加えて、再生医療という選択肢も検討されています。なお、再生医療はベーカー嚢腫そのものを対象とする治療ではなく、背景にある慢性的な膝の痛みに対する選択肢の一つです。

再生医療は、関節内で起きている炎症やダメージに伴う痛みの改善を目的として、膝の関節へ直接注射を行う治療です。ご自身の血液や細胞の力を活用し、炎症の抑制や組織の修復を促すアプローチとして検討されています。当院では再生医療を専門とし、PRP-FD(PFC-FD™)治療や培養幹細胞治療を行っています。

ご自身に合った方法を考えるための整理として、保存療法・手術療法・再生医療の3つの特徴を比較表にまとめました。

治療選択肢比較表

※スクロールできます

治療法 主な目的・内容 メリット デメリット 入院の有無
保存療法 (理学療法・薬・ヒアルロン酸注射など) 痛みや炎症を抑える (対症療法が中心) 手術をせず手軽に始められる。 根本的な改善につながらないことがあり、痛みがぶり返すケースもある。 不要
手術療法 (骨切り術・人工膝関節置換術など) 傷んだ関節の状態を改善したり、アライメント(骨の配列)を矯正する。 重症例で根本的な改善が期待できる場合がある。 入院や数か月単位のリハビリが必要で、体への負担が大きい。 必要
再生医療 (PRP-FD(PFC-FD™)治療・培養幹細胞治療など) 炎症の抑制・組織の修復を促す 日帰りで治療が完結し、ご自身の血液や細胞を用いる。 自由診療のため費用は医療機関により異なる。 不要

膝の痛みや炎症に対しては、運動療法や体重管理を中心とした保存療法が、診療ガイドラインでも推奨される有効な第一選択とされています。そのうえで改善が乏しい場合に、手術療法や再生医療が検討されます。それぞれに目的や体への負担、費用の違いがあるため、医師と相談しながら適切な治療法を検討することが大切です。

「繰り返す膝裏のふくらみや、長引く膝の痛みの原因がわからない」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。当院では、待ち時間なく膝の詳細な状態がわかる「MRIひざ即日診断」をご用意しています。

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ベーカー嚢腫は何科を受診?受診の目安

ベーカー嚢腫の疑いがあるとき、まず整形外科を受診し、膝の状態を確認することが大切です。整形外科では、膝関節やその周囲の状態を診察や検査で確認し、ベーカー嚢腫かどうか、背景に膝の病気がないかを調べていきます。

次のような場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに整形外科へ相談しましょう。

  • ・膝裏のふくらみが大きくなってきた、または硬く感じる
  • ・膝の曲げ伸ばしや歩行がしづらくなってきた
  • ・ふくらはぎに急な腫れや痛み、赤みが出た
  • ・膝裏のふくらみを繰り返している

特に、ふくらはぎの急な腫れや痛みは、深部静脈血栓症との見分けが必要なサインです。気になる症状があるときは、無理をせず早めに医療機関で相談してください。膝裏のふくらみがベーカー嚢腫かどうかは、診察を通して確認することになります。

まとめ|ベーカー嚢腫は背景の膝の状態まで含めて見極めを

ベーカー嚢腫は、膝裏に関節液がたまってふくらむ、多くは良性の状態です。子どもでは経過観察で自然に小さくなることも多く、大人では変形性膝関節症などの膝の病気を背景に生じることが多いとされています。

ご自宅でできるアイシングやサポーター、膝裏の負担をやわらげるストレッチは、医療機関の指示のもとで取り入れることで悪化を防ぐ助けになります。一方で、強く揉む・自己流で潰すといった行為は避け、ふくらはぎの急な腫れや痛みがあるときは早めに受診しましょう。

ベーカー嚢腫の原因や治療法について、医師の回答をより詳しく知りたい方は、こちらも参考になります。

ベーカー嚢腫の原因と治療法について教えてください

膝裏のふくらみが気になりながらも、どこに相談すればよいか迷っている方もいらっしゃるかもしれません。繰り返す膝裏のふくらみや長引く膝の痛みは、「いつか小さくなるだろう」と放置せず、背景の膝の状態まで含めて見極めることが大切です。当院では、膝の状態を詳しく確認できる「MRIひざ即日診断」で、原因や今後の見通しをわかりやすくご説明しています。

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よくある質問

ベーカー嚢腫は自然に治りますか?

背景の炎症が落ち着けば、ふくらみが自然に小さくなることもあります。特に子どもの特発性のベーカー嚢腫は、経過観察で小さくなることも少なくないとされています。一方、大人では背景に膝の病気があることが多く、その状態が続くと繰り返しやすい傾向があります。小さくならない、繰り返すという場合は、背景の状態を確認してもらいましょう。

ベーカー嚢腫は何科を受診すればよいですか?

まずは整形外科の受診が基本です。整形外科では、膝関節やその周囲を診察し、ベーカー嚢腫かどうか、背景に膝の病気がないかを確認していきます。ふくらはぎの急な腫れや痛みがあるときは、深部静脈血栓症との見分けが必要なため、早めに受診しましょう。

ベーカー嚢腫を自分で潰しても大丈夫ですか?

膝裏のふくらみを自分で潰したり、強く揉んだりするのは避けてください。袋が破れて炎症が広がったり、感染を起こしたりする恐れがあります。中の関節液を抜く処置が必要な場合は、医療機関で清潔な環境のもと行うものとお考えください。

ベーカー嚢腫があるとき、運動やストレッチはしてもよいですか?

痛みが出ない範囲であれば、太もも裏やふくらはぎのストレッチが膝への負担をやわらげる助けになることがあります。ただし、自己判断で負荷を強めず、医療機関の指示のもとで行うことが大切です。痛みが強いときや、ふくらはぎの腫れが疑われるときは中止し、受診を優先しましょう。

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