「歩く時や階段の昇り降りで、太ももの外側の付け根がズキッと痛む」
「夜、横向きに寝ると痛くて目が覚める」
「単なる筋肉痛なのか、軟骨がすり減っているのか分からず不安…」
このように、股関節の外側に原因の分からない痛みを抱え、病院へ行くべきか、自分でストレッチなどをして良いのか迷っている30〜70代の方は非常に多くいらっしゃいます。
この記事では、関節の専門医の視点から、一般的な股関節痛とは異なる外側特有の痛みの原因をはじめ、やってはいけないNG行動・最新の治療法を解説します。
まずはMRI検査で痛みの正体を正確に見極めることが、根本改善への第一歩となります。
目次
- 股関節の外側が痛いのはなぜ?前側(足の付け根)との違い
- 外側の骨の出っ張り大転子(だいてんし)とは
- 外側の痛みを引き起こす3大原因
- 原因①筋肉や滑液包の炎症「大転子疼痛症候群(GTPS)」
- 中殿筋・小殿筋や「滑液包」がこすれて炎症を起こす
- 特徴的なサインは横向きに寝た時の痛み(夜間痛)
- 原因②お尻から太もも外側がしびれる坐骨神経痛
- しびれが伴う場合は「腰からの関連痛」を疑う
- 股関節の異常と間違えやすいので要注意
- 原因③関節自体の軟骨がすり減る変形性股関節症
- 進行すると外側や太ももにも痛みが広がる
- 足の爪切りや靴下の着脱が困難になるサイン
- 要注意!股関節の外側が痛い時にやってはいけないNG行動
- やってはいけないNG行動リスト
- 痛い側を下にして寝る姿勢は炎症を強める
- 痛みが強い急性期の無理なストレッチは絶対NG
- 痛みの原因を特定するには?レントゲンとMRI検査の違い
- 筋肉や滑液包・神経はレントゲンには写らない
- 根本原因を可視化する関節のMRI検査の重要性
- 股関節の外側の痛みを治す治療法と再生医療
- 湿布や痛み止めなどの保存療法とその限界
- 難治性の痛みに対する第3の選択肢「再生医療(PRP療法)」
- まとめ:股関節の外側の痛みを放置せず、まずは原因の特定を
股関節の外側が痛いのはなぜ?前側(足の付け根)との違い
股関節の痛みと聞くと軟骨がすり減っていると想像しがちですが、痛む場所が外側か前側かによって、引き起こされる原因は全く異なります。
一般的に「股関節が痛い」と言って整形外科を受診される方の多くは、足の付け根の前面(鼠径部:そけいぶ)に痛みを感じています。これは、関節の軟骨がすり減る変形性股関節症などの関節内部のトラブルであることが大半です。
一方で、今回テーマにしている外側の痛みは、関節そのものよりも、骨の外側を取り巻く筋肉や神経のトラブルが原因であることが多いと考えられています。
外側の骨の出っ張り大転子(だいてんし)とは
股関節の外側の痛みを理解する上で、鍵となるのが大転子(だいてんし)という部位です。
まっすぐ気をつけの姿勢で立った時に、太ももの一番上の外側、股(また)の真横あたりで、手で触れることができる硬い骨の出っ張りがあると思います。これが大転子です。大転子は太ももの骨(大腿骨)の一部であり、歩く、走る、片足で立つといった動作の際に、体を安定させるための重要な支点となります。
この大転子には、中殿筋(ちゅうでんきん)をはじめとする様々な筋肉や腱が集中してくっついています。そのため、歩行時や姿勢の乱れによって非常に大きな物理的負担が集中しやすく、摩擦や炎症が起こりやすいデリケートな場所なのです。
外側の痛みを引き起こす3大原因
股関節の外側が痛む場合、主に以下の3つの原因が疑われます。ご自身の症状がどれに近いか、まずは大まかな特徴を整理しておきましょう。
| 疑われる主な原因 | 痛みの出どころ | 特徴的な症状のサイン |
|---|---|---|
| ①大転子疼痛症候群 (だいてんしとうつうしょうこうぐん) | 筋肉の腱や、摩擦を防ぐ袋(滑液包)の炎症 | ・歩く時や階段で、外側の出っ張りが痛む ・横向きに寝ると外側が痛い(夜間痛) |
| ②坐骨神経痛 (ざこつしんけいつう) | 腰から足へと伸びる神経の圧迫 | ・お尻から太もも外側、裏側に痛みが走る ・ピリピリとしたしびれが伴う |
| ③変形性股関節症 (へんけいせいこかんせつしょう) | 関節内部の軟骨のすり減り | ・初期は足の付け根(前側)が痛む ・進行すると外側にも痛みが広がる |
このように、痛む場所が少し違うだけで、筋肉、神経、関節(軟骨)と、アプローチすべき原因が大きく異なります。次項から、これらの原因についてさらに詳しく解説していきます。
原因①筋肉や滑液包の炎症「大転子疼痛症候群(GTPS)」
歩行時や、横向きに寝た時に外側が痛む場合、大転子の周辺にある筋肉の腱や、クッションである滑液包(かつえきほう)が炎症を起こしている可能性が高いと考えられます。
このような、股関節の外側(大転子周辺)に生じる特有の痛みを総称して「大転子疼痛症候群(GTPS)」と呼びます。聞き慣れない病名かもしれませんが、外側の痛みの原因として非常に多い疾患です。
中殿筋・小殿筋や「滑液包」がこすれて炎症を起こす
大転子疼痛症候群は、どのようにして起こるのでしょうか。
私たちの骨盤から大転子にかけては、足を横に開いたり、片足立ちや歩行の際に骨盤を水平に保ったりするための重要な筋肉(中殿筋や小殿筋など)がついています。
加齢によるこれらの筋肉の衰えや、スポーツ・長時間の歩行による使いすぎが起こると、筋肉や腱が硬く緊張してしまいます。その結果、大転子の骨の出っ張りと腱との間で強い摩擦が生じやすくなります。
また、骨と腱が直接こすれるのを防ぐために、大転子の周囲には「滑液包(かつえきほう)」という少量の液体が入ったクッションのような袋が存在します。過度な摩擦が繰り返されると、この組織が炎症を起こして腫れ上がり、ズキッとした強い痛みや引っかかりを引き起こすと考えられています。
特徴的なサインは横向きに寝た時の痛み(夜間痛)
大転子疼痛症候群かどうかを見極める上で、非常に特徴的なサインがあります。
痛む側を下にして寝た時や、寝返りを打った時に、大転子が圧迫されてズキッと痛む就寝時痛・夜間痛がこの疾患の大きな特徴です。
大転子は体の表面に近い出っ張った骨であるため、痛む側を下にして寝ると、ご自身の体重によって大転子周辺の滑液包や筋肉が直接強く圧迫されてしまいます。歩く時だけでなく、夜、横向きに寝ると外側が痛むという場合は、この大転子周辺の炎症が強く疑われます。
原因②お尻から太もも外側がしびれる坐骨神経痛
股関節の外側だけでなく、お尻やふくらはぎにかけてピリピリとしたしびれを感じる場合は、股関節そのものではなく腰の神経トラブルが原因です。
しびれが伴う場合は「腰からの関連痛」を疑う
お尻から太ももの外側にかけて痛みが走り、ビリビリ・ジンジンとした感覚が伴う場合、それは「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」の可能性が高いと考えられます。
「しびれ」が伴う場合は、股関節そのものではなく「腰」の神経トラブル(椎間板ヘルニアなど)が原因である可能性が高いです。
腰の部分で神経が圧迫されると、その痛みが神経の通り道である「太ももの外側」に放散痛(ほうさんつう)として現れるのです。
股関節の異常と間違えやすいので要注意
坐骨神経痛による太もも外側の痛みは、患者様ご自身で股関節が悪いと勘違いされやすい典型的なケースです。
「足の付け根の外側が痛いから、きっと股関節の軟骨がすり減っているんだ」と思い込み、整形外科で股関節のレントゲン検査を受けても「異常なし」と言われてしまい、原因が分からず途方に暮れてしまう方が多くいらっしゃいます。
痛みがどこから来ているのか(筋肉なのか、神経なのか)を正しく見極めなければ、根本的な解決にはなりません。
こちらの記事では、足や膝のしびれの原因に関するよくある質問を詳しく解説しています。外側の痛みとしびれにお困りの方はこちらの記事をご確認下さい。
原因③関節自体の軟骨がすり減る変形性股関節症
加齢などが原因で関節の軟骨がすり減り、初期は前側(鼠径部)が痛み、進行すると外側やお尻周辺にまで痛みが広がっていくことがあります。
進行すると外側や太ももにも痛みが広がる
変形性股関節症は、関節のクッションである軟骨がすり減り、骨同士が直接ぶつかるようになる病気です。
基本的には足の付け根(前側)に痛みを感じることが多いですが、進行して関節の安定性が失われると、体を支えるために大転子周辺の筋肉に過度な負担がかかるようになります。
その結果、本来の原因は関節内部にありながら、外側の筋肉が悲鳴を上げて痛みが広がっていくという現象が起こります。
足の爪切りや靴下の着脱が困難になるサイン
痛みの場所だけでなく、股関節の動かしやすさ(可動域)も、変形性股関節症を見分ける重要なサインとなります。
あぐらをかく動作ができない、靴下を履きづらいといった関節の可動域制限がある場合は、変形性股関節症が進行しているサインです。
このような症状に心当たりがある場合は、関節内部の軟骨がこれ以上すり減ってしまう前に、関節の専門医を受診して適切な検査を受けることが重要です。
こちらの記事では、腰痛と膝の痛みの関連性について詳しく解説しています。股関節、膝、腰など複数箇所の痛みにお悩みの方はこちらの記事をご確認下さい。
要注意!股関節の外側が痛い時にやってはいけないNG行動
痛みを和らげようと良かれと思って行った行動が、かえって筋肉や滑液包の炎症を悪化させ、治療期間を長引かせてしまうことがあります。
やってはいけないNG行動リスト
ご自身の痛みを長引かせないために、まずは以下の行動を避けるように注意してください。
- ・痛い側を「下にして」横向きに寝る
- ・痛みが強い時期に、股関節周りを無理にストレッチして伸ばす
- ・痛む部分(大転子周辺)を直接強くマッサージして揉みほぐす
痛い側を下にして寝る姿勢は炎症を強める
大転子疼痛症候群が疑われる場合、絶対に避けていただきたいのが痛む側を下にして寝るという姿勢です。
炎症を起こして腫れ上がっている滑液包や腱が一晩中直接圧迫され続けると、炎症と痛みがさらに激化してしまいます。
就寝時は、必ず痛くない側を下にして寝るか、仰向けで寝るように心がけてください。横向きで寝る場合は、両膝の間にクッションなどを挟むと、外側の筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。
痛みが強い急性期の無理なストレッチは絶対NG
「筋肉が硬いから痛いんだ。我慢してでも伸ばせば治るはず」と自己判断し、ズキズキと痛む時期(急性期)に股関節周りを無理にストレッチするのも非常に危険な行為です。
痛みが強い時期に、自己判断で股関節周りを無理にストレッチして伸ばすことは絶対に避けてください。
傷口が開いているような状態の時に無理なストレッチを行うと、その傷口をさらに強く引っ張ってしまい、組織の破壊を広げるリスクがあります。ストレッチは、炎症が落ち着き、専門医の指導を受けてから再開するようにしましょう。
痛みの原因を特定するには?レントゲンとMRI検査の違い
レントゲン検査は骨の変形を見るのには優れていますが、外側の痛みの主な原因となる筋肉や滑液包の炎症、神経の圧迫は一切写らないため、原因特定にはMRI検査が不可欠です。
筋肉や滑液包・神経はレントゲンには写らない
病院を受診した際、まず初めに行われるのがレントゲン(X線)検査です。「レントゲンを撮って異常なしと言われたのに、どうしても痛みが引かない」と不安を抱える方は非常に多くいらっしゃいます。
実は、レントゲンは骨の変形を発見することには優れていますが、筋肉や滑液包、神経といった柔らかい組織のトラブルを正確に可視化するには「MRI検査」が不可欠です。
レントゲンで異常なしは「骨の形に異常がない」というだけであり、痛みの原因がないという証明にはならないのです。
根本原因を可視化する関節のMRI検査の重要性
MRI検査であれば、中殿筋のダメージ具合や、滑液包の炎症、腰の神経が圧迫されている様子まで、非常に鮮明に確認することができます。
どこがどの程度傷んでいるかを画像を見て診断してもらうことで、ご自身の本当の原因に合わせた確実な治療方針を立てることが可能になります。
レントゲンで異常がないのに股関節の外側が痛む方、ご自身の痛みの原因を早く知りたい方は、まずは当院の「MRI即日診断」で現状を正しく把握しましょう。
なお、股関節の診療が可能な院については、当院までお問い合わせください。
こちらの記事では、膝のMRI検査で何がわかる? 知っておきたいMRIとレントゲンの違いを詳しく解説しています。診断方法に不安を感じている方はこちらの記事をご確認下さい。

股関節の外側の痛みを治す治療法と再生医療
痛みの原因が特定できれば、まずは湿布やリハビリなどの保存療法を行いますが、長引く痛みには再生医療という切らない治療の選択肢もあります。
湿布や痛み止めなどの保存療法とその限界
医療機関を受診して大転子疼痛症候群などの診断を受けた場合、まず第一選択となるのが投薬やリハビリによる「保存療法」です。
しかし、保存療法はあくまで「今ある炎症を抑える対症療法」であり、腱の傷みや炎症が慢性化しているケースでは完全に治しきれないという限界があります。
「何ヶ月も治療を続けているのに、すぐに痛みがぶり返す」という場合は、組織の破壊が保存療法でコントロールできる範囲を超えている可能性があります。
難治性の痛みに対する第3の選択肢「再生医療(PRP療法)」
「手術はしたくないが、今の痛みをどうにかしたい」と悩む方への新たな治療として注目されているのが、メスを入れない再生医療です。
難治性の腱炎や関節包炎に対し、ご自身の血液成分を用いて組織の修復を促す「PRP療法」という切らない治療の選択肢もあります。
治療選択肢の比較表
| 治療法 | 主な目的・内容 | メリット | デメリット | 入院 |
|---|---|---|---|---|
| 保存療法 | 痛みの緩和(対症療法) | 手軽で負担が少ない | 重症例では慢性化の恐れがある | 不要 |
| 手術療法 | 物理的な構造の修復 | 根本的な改善が期待できる | 入院が必要・体への負担が大きい | 必要 |
| 再生医療 | 組織の修復促進・抗炎症 | 日帰りで可能・拒絶反応リスクが低い | 自由診療のため費用が高額な場合がある | 不要 |
こちらの記事では、PRP療法が膝の痛みに果たす役割とは?【効果・メリット・デメリット】を詳しく解説しています。手術を避けつつ組織の修復を早めたい方はこちらの記事をご確認下さい。
まとめ:股関節の外側の痛みを放置せず、まずは原因の特定を
本記事で解説してきた通り、股関節の外側の痛みには、筋肉の炎症や神経痛、関節の変形など、その原因が多岐にわたります。それぞれ原因が異なれば、正しい対処法も全く異なります。
手探りでセルフケアを続けるのではなく、専門医の診断とMRI検査で正確な原因を特定することが、早期解決の鍵となります。
原因の分からない痛みを長引かせないためには、「今、自分の股関節に何が起きているのか」を専門医の診断とMRI検査で突き止めることが最も確実な改善への第一歩です。
股関節の外側の痛みが長引いている方へ
股関節の痛みやしびれは、筋肉や神経、関節などさまざまな原因が考えられます。症状が長引いている場合は、お近くの整形外科を受診し、レントゲンやMRIなどによる検査を受けて原因を特定することが大切です。
※当院は膝の再生医療を専門とするクリニックのため、しびれは診察対象外となります。整形外科の受診をご検討ください。

人工関節以外の新たな選択肢
「再生医療」
変形性膝関節症の方、慢性的なひざの
痛みにお悩みの方は是非ご検討ください。
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